2017-11-14

カレーと喫茶と難波ベアーズ

2017年11月11日(土)

この日は私が鍵盤奏者として参加している「並木達也とゆうやみ」のライブ遠征で大阪へ。
あの名高い難波ベアーズで演奏する楽しみと、”大阪スパイスカリーを食べまくる”野望を抱きながら新幹線に乗り込んだ。


行きの車内では高野秀行氏の「日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活」を読む。私はカレーに留まらずエスニック料理にも目がない。日本国内に住むタイ・フィリピン・台湾・フランス・イランなどの外国人の皆さんが作る美味しそうな母国の料理の描写を読みながら、大阪で沢山カレーを食べるために空っぽにしておいた私のお腹は活字による飢餓に耐えるのに必死だった。高野氏は「謎の独立国家ソマリランド」、「謎のアジア納豆」など名著で知られる海外系ルポの名人で(「謎」ばっかりですね)、最近読んでいる作家のひとり。
LCD Soundsystemのライブ盤"The Long Goodbye"を聴く。私が前回新幹線に乗車したのは7月末のフジロックの時。豪雨の中観たLCD Soundsystemの素晴らしい演奏にいたく感銘を受けた私は、翌日フジロックの思い出に浸りながら帰りの新幹線で聴いたのがこのライブ盤。私にとって新幹線="The Long Goodbye"なのです。



バンドのリハ前にどうしても2回カレーが食べたかった私は新大阪到着後に福島駅へ直行、「スパイスカリー大陸」で最初のカレーを頂く。トマトの主張が強い、東京の「カレーは飲み物。」の赤い鶏カレーの上位互換とも言うべきグッドな味わい。店内は木目調の落ち着いた雰囲気。カフェとしての利用も可能で、2階にはバックパッカー向けの宿も併設している。会計時に私の荷物を見た店員のお姉さんが「それ、キーボードですか?」と話しかけてくれた。ライブで東京から来た旨を伝えると曰く「ぜひ今度は泊まっていってくださいね」…次回はここに泊まろうかな。


店を出たあとはそのまま歩いて京阪中之島線・中之島駅へ。玉江橋周辺は人混みもなく静かで落ち着く。大阪という都市のメリハリ加減が好きだ。しかし駅構内はとってもキレイなのに車両がやたら古臭いのはなんなんだろう。




北浜のコロンビア8に向かう。このときスパイスカリー大陸でカレーを食べてから1時間ほどしか経過していない。着いてみると先客が店の外に9名…これぞ大人気店。お腹ポンポコリン状態の私にとってお店の行列がこれほど有り難いと思ったことは25年の人生において無かった。やはり、空腹は健全な精神の敵である。全てを赦す仏の心持ちで行列に並んだ。入店後、お客さんと店主の会話の中で「コロンビア8が最近ミシュランに選ばれた」、「レトルト版の開発に1年費やした」と知る。着席後15分ほどで強烈なビジュアルのカレーが登場。左手にししとう、右手にスプーンというスタイルで食べるカレーは、スパイスのマジックが口の中で炸裂する独創性の高い一皿。あまり腹が減っていないにもかかわらず、無我夢中で食べた。これは中毒性が高い。二度でも三度でも何度でも絶対に食べてしまうカレーだ。会計時に店主が「またししとう食べに来てくださいね」と陽気に送り出してくれる。大阪らしい気さくな接客がまたいいんだ。

難波のレコード喫茶で並木さんと落ち合うために難波駅方面へ向かう。駅前で演説する街宣右翼を煽っていた青年が完全に右翼の怒りを買い、青年を全力で追いかけるスーツ姿の右翼、全力で逃げる青年、両者がアーケード街の人混みの中を激走するという、映画みたいな光景が見られた。


並木さんが発見してくれたレコード喫茶graffitiは、飲み物を頼むと歌本に載っている曲を1曲無料で、しかもレコードでかけてくれるという画期的な喫茶店。歌本掲載のアーティストは邦楽・洋楽ともに充実していて、追加リクエストは1曲あたり100円。ある意味ジュークボックス感覚で音楽を聴くことが出来る。店内は広々としており分煙も完璧、内装もレコードだらけで私のような音楽ナードにはたまらない光景。東京にもこういう店があったらよいのになあ。ちなみに私はSteely Danの"Peg"と、Fleetwood Macの"Dreams"をリクエストした。あまりの居心地の良さに翌日も行ってしまった。

ようやく難波ベアーズの話。一番感激したのは楽屋の広さ。あの居心地の良さは今まで経験したことがない。楽屋でドラムの金光くんが「現代プロサッカーにおけるフォーメーションのトレンド」について熱心に語るのを聞いているうちにあっという間に出演時間になってしまった。

いかんせん花おこしさんの演奏がとにかく素晴らしかった。浮遊感のサイケロックな演奏にSSW然としたソフトな長濱さんのボーカルが乗っかるサウンドがドストライクだった。最近は一度も聴いたことのないバンドのライブを観るときは、演奏そのものやアレンジにプラスして、「楽曲のコード進行が自分好みかどうか」を聴くようにしているのだが(いかにもナードっぽいアプローチである…)、これには理由があって、楽曲のコード構成に作者の聴いてきた音楽、バックグラウンドがハッキリと反映されるから。いかんせん花おこしさんの楽曲のコードは少し捻りがあって、長濱さん自身もグレイトフル・デッドなどがお好きとのことで非常にシンパシーが感じられる楽曲構成だった。力強さとやさしさが共存する、絶妙な音楽性を持つバンド。いかんせん花おこしさんとは自分のサイケポップバンド・Lo-Fi Clubでいつか対バンしてみたいです。また、今回はPAがいかんせん花おこしさんの新譜に携わっているレコーディングエンジニアの須田さんが担当していた関係もあって、出力のバランスも驚くほど良かった。プロの仕事。ゲストの元山さんのペダルスティールも効果的だった。
並木さんのシングルCDもたくさん売れたようだし、物凄く良いライブになったなあ。

終演後、バンドメンバーに「文化的にのし上がりたい」、「目標はタモリ倶楽部に出ること」と語り爆笑される。POPEYEにも載りたいぞ。
打ち上げ会場の餃子の王将の店内BGMがジェネシスの"I Know What I Like"だったり、バッドフィンガー、トッド・ラングレンなどやたら渋くて驚いた。時間帯もド深夜だったしあれは夢だったのだろうか?

PS 自分のバンドでもぜひ大阪遠征したいので、バンドやってる方、もし良かったら誘ってください。もちろん東京でもオッケーです。音源はこちらです…↓