2014-09-28

Mac DemarcoのWhat's in my Bag





 Amoebaという独立系レコードショップがアップしている"What's in My Bag"というシリーズに大好きなMac Demarcoが登場していました。店舗のレコード棚を漁ってアルバムについて語る動画なのですが、そこで興味深い事実が述べられていました。3:00頃の場面なのですが、ブルース・スプリングスティーンの"The River"を棚から見つけてジャケットのモノクロ具合や字体がデマルコのアルバム"2"に似ているという話が出た時に、実は"The River"ではなく細野晴臣の"Hosono House"の字体を参考にした、とデマルコが言っているのです。海外ではジャパニーズレアグルーヴという扱いを受けている70年代の細野晴臣ですが、まさかこういった形で影響を与えているとは思いませんでした。

 この話だけで今回の記事を終わらすのも何か勿体ないというか味気ない感じがするのでMac Demarcoの魅力についても語りたいと思います。マック・デマルコは若干24歳のカナダ人ローファイインディ系のシンガーソングライターで、2012年にファーストEP"Rock and Roll Night Club"(EPは持っていませんが表題曲はLast.fmで無料DLしました)、ファーストアルバム"2"を発売、2014年の春には"Salad Days"を発表しました。彼の魅力は硬質でコーラスを効かせたビザールなギターサウンド、脱力感のあるボーカル、そしてローファイでサイケなアレンジにあります。コーラスエフェクトを全面に押し出したギターサウンドはこの手のミュージシャンにしては特殊で奇妙な印象を受けますが、そのコーラスとリバーブの掛け具合が心地よいレイドバック感を生み出していますし、楽曲自体もメロディアスなものが多いので気軽に聴けます。
 私がMac Demarcoにハマったのは今年の3月に"Passing Out The Pieces"という"Salad Days"収録のシングル曲をYoutubeで聴いたことがキッカケでした。



 この曲を初めて聴いた時はギターというよりもずっと裏打ちで鳴っているフェイザーを効かせたシンセの音が大変印象的で、「2014年にこんな音を出す人がいるのか!」という驚きを覚えました。その後"2"収録の胡散臭いギターが冴え渡る"Ode to Viceroy"(死ぬまでタバコを吸ってやるぜ、というサウンド同様時代錯誤な歌詞)、メロウな"My Kind of Woman"(PVではデマルコが女装してます)を聴いて完全にハマってしまいました。Ode to Viceroyのビデオはスナッフビデオのような怪しさと8ミリビデオの懐かしい質感が楽曲のムードをうまく伝えている名作だと思います。ぶっちゃけ、"Passing Out The Pieces"のPVの方は悪趣味な気がしますが…。
 僕のような最近のシーンに疎いタイプの音楽好きにオススメ出来る素晴らしいミュージシャンですので聴いたことのない方は是非。まだ若干24歳ということで今後どういう作品を出すのか楽しみです。"2"と"Salad Days"は作風が似ているので、次回はもっとぶっ飛んだものを作って欲しいな。




2014-09-12

元ザッパバンドのドラマー、デヴィッド・ローグマン氏のインタビュー

 歴代ザッパバンドのドラマーの中で最も地味で人気がないと思われるデヴィッド・ローグマン氏(1980年在籍、『ティンゼルタウン・リベリオン』や『ユー・アーホワット・ユー・イズ』の録音に参加)のインタビューが思いのほか面白かったので和訳して掲載することにしました。ソース元はザッパやビーフハート、レジデンツ等の情報データベースサイト、United Mutationsデヴィッド・ローグマン氏のページに掲載されているインタビュー文です。


ローグマン在籍時の演奏(1980年6月11日 パリ/フランス)

Pat Buzby(インタビュアー)からのメール
こんにちは。返信ありがとうございます。お時間があれば質問にいくつか答えていただきたいのですが。質問は沢山ありますので全て答えていただかなくても結構ですよ。
-あなたの音楽的なバックグラウンドはどのようなものですか?ザッパバンドに参加する以前にあなたはMingo LewisとJakob Magnussonのフュージョン系バンドに参加していたようですが、どのような作品に仕上がったのですか?
-ザッパバンドのオーディションはどうでしたか?あなたがツアーの直前にメンバーとして採用されたということを最近お聞きしました。
-ツアーやセッションでの思い出(シャンカールとの共演やピエール・バーレーズがライブを観に来たこと、ピーター・ガブリエルやサンタナとの対バンなど)は何ですか?アーサー・バロウは『ユーアーホワットユーイズ』のリズムトラックが非常に早く出来上がったと私に教えてくれましたよ。スタジオ録りではなくライブ録音による楽曲について何か覚えていますか?おそらく"Theme from the Third Movement of Sinister Footwear"はアルバムの中でも最も変な曲ですよね。どうやって各々の演奏を合体させたんですか?
-onstageシリーズやレコードでも聴けない楽曲に携わったことはありますか?ギターソロでザッパが引用したあるインスト曲(ファンは"Mystery Rehearsal Piece"と呼んでます)が存在するのですが、あなたはその曲のことを知っているようですね。
-チューリッヒ公演の最初であなたは"David Logeman on drums and dust particles"(「ドラムと粉塵担当、デヴィッド・ローグマン」)とザッパに紹介されていますが、これについて何か覚えていますか?
-あなたが在籍していた当時、ザッパは「ポップ」な楽曲を志向していたようですが、ザッパバンドに参加して以来、あなたは「フュージョン」よりもこうしたポップ方面へ進んでいったようですね。時間を経て音楽的な趣向が変化したのでしょうか?
-脱退後ザッパ本人や他のメンバーと連絡を取りましたか?ザッパバンドに長く在籍し、彼の音楽に馴染んだほかの人たちよりも、幸せなキャリアをあなたは過ごしてきたようですが。
-おそらく80年代後半か90年代前半にクリスチャン系のロックバンドにあなたが在籍していたという噂を耳にしました。本当ですか?
-前回のメールでは現在のあなたの素晴らしい写真を頂くことが出来ました。他に加えるべきものはありますか?

David Logemanの回答

親愛なるPatへ
Mingo Lewis and Jakob Magnussonの作品は現在廃盤になっています。ザッパバンドのオーディションは凄かったです。「大きな耳を持ってるか?楽譜は読めるか?ロックは演奏出来るか?」、それが当時の彼がドラマーに要求した条件でした。オーディションの最初の課題は以下のようなものでした、ザッパバンドのメンバーが7/8拍子と3/16拍子のグルーヴを演奏する中、ザッパがドラマーを指揮棒で指してこう言うんです、「演奏しろ!」 ワオ!楽譜を読むのは大変でしたが、私はロック演奏の経験が豊富でした。彼は私をオーディションに4回呼んでくれて、驚くことに、私は54人のオーディションを経てザッパバンドのドラマーとして採用されました。ツアーは最高でしたよ。ヨーロッパをプライベートジェットで回るんです。レッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズ、ボブ・マーリーとフランクで会場をローテーションするツアーで、チケットは完売でした。楽しいアメリカツアーには沢山の友人や私の家族が観に来てくれましたよ。私の音楽的バックグラウンドはクラシック、ロック、ジャズで、学歴はイリノイ大学、インターローチェン芸術学校、バークリー音楽大学です。
 『ユーアーホワットユーイズ』はツアー終了後にライブトラックをまったく使用しない形式で録音されました(※正確には"Movement of Sinister Footwear"のギターソロ、"If Only She Woulda"のベーシックトラックはライブ音源)。『ティンゼルタウンリベリオン』には私が参加したスタジオトラック(※おそらく"Fine Girl")と、別で参加したライブトラックが1、2個あったと思います。『黙ってギターを弾いてくれ』やベスト盤にも少し参加していますよ(※実はローグマンは『黙ってギター~』に一切参加していない。"Strictly Commercial"というベスト盤にはローグマンが参加した"Fine Girl"が収録されている)。私はまだリリースされていないいくつかのトラックや、YCDTOSAシリーズとして発売される予定だったフィラデルフィア公演(※おそらく1980年4月29日のタワーシアターでのライブ[Zappateers調べ])のライブアルバムにも参加しました。その音源はもしかしたらRykodiskから発売されているかもしれません。あなたが言及している他のものは単なる即興のジャムで後にフランクが楽曲として仕上げました。彼は一定の文脈の中でたくさんの自由を与えてくれました。彼はかつてやっていたようなロックアルバムが作りたかったのです。
 『オーバーナイト・センセーション』は私のお気に入りのアルバムで、私が在籍していた頃の作品は『オーバーナイト・センセーション』の作風に近いです。私のフュージョンとの関わりは単にお金です。私の目標は、常に自分の給料となる十分なお金を稼ぐためにライブ演奏やスタジオ録音に参加することが出来ている間に、色んなのジャンルの音楽を可能な限り演奏することなのです。神様ありがとう、これらは私が神から恵まれた物です。FZのチューリッヒでの私の紹介は、私がクスリをやらないという事実に基づいた彼によるジョークです。クリスチャンであるにもかかわらず、私はクリスチャン系のバンドには参加したことがありません。
 ええ、私はFZと連絡を取り続けていました。彼はヴィニー(カリウタ)を私の代わりにドラマーに復帰させたことを悪く思っていて、彼は自分の気持ちを楽にする意味で私に多くのお金をくれました。私自身はヴィニーの復帰については冷静に捉えていて、フランクはその事に対して感謝していました。ザッパバンドを辞めた後8年間テレビの仕事を続けていましたが、私はフランクと演奏する機会が無くて残念に思っていました。彼は素晴らしかったです。
 私は参加している様々なプロジェクトで忙しいので現時点で加えるべきものはありません。もっと細かいことをあなたに伝えられず申し訳ないです。しかし、私がフランクと過ごした半年間、沢山の出来事がありました。それは私のキャリアのハイライトでしたが、私が今まで経験してきた中で最も楽しくて価値のあるもの、というわけではありませんでした。
こうした機会を与えてくれた神に感謝します。何故なら、この全ての出来事が奇跡だったからです―それは間違いないでしょう…
ありがとう
デヴィッド・ローグマン

David Logemanの回答②
親愛なるパトリックへ
以下が私がザッパと出会い、バンドに加入した経緯です。
私はあるキーボーディストの友人にザッパバンドのオーディションのことを訊きました。その友人がザッパのマネージャーの電話番号をくれたので電話しましたが、すぐに断られてしまいました。その後、彼らは私がサンタナバンドのMingo Lewis、ジャズ・フュージョン系ミュージシャンのJakob Magnussonの作品に参加し、マイケルコロンビーのバンドでスティーヴ・ガッドの代役を務めた経験があることを知ると、オーディションを受けさせるために私をジョーズ・ガレージに呼び出しました。その日はたしか5人ほどの候補者が居ました。私は単に伝説の男に会いに行っただけであって、バンドに参加するチャンスがあるとは微塵にも思っていませんでした。フランクはすぐにこう言いました、「君たちは『大きな耳』を持ってなくてはならない、楽譜が読めなければならない、ロックを演奏出来なければならない」。ドラムキットは既に準備されていて、バンドの面々(アイク・ウィリス - ギターボーカル、レイ・ホワイト - ギターボーカル、トミー・マーズ - キーボード、アーサー・バロウ - ベース)が変な拍子(7/8拍子と3/16拍子が交互のリズム)をザッパ不在の状態で、また注意や指示すら一切無いまま演奏し始めました。するとフランクは指揮棒で最初のドラマーを指して「演奏しろ!」と言い、そのドラマーのオーディションが一瞬で終了してしまうのを目の当たりにしました。最初のドラマーは拍子を掴むことが出来ず、10秒も経たない内にフランクはバンドの演奏を止めさせて「ご参加ありがとう!(※=もう帰れ)」と言い放ったのです。私は「こりゃマズい!」と思い、私は自分の順番が回ってくるまでにグルーヴを掴んで演奏し始めました。その結果、フランクは私に明日のオーディションにも来るように言いました。
 前日のオーディションよりも参加者が増えていました!LAからNYなどから大物ドラマー達がはるばるオーディションにやって来ていたのです。私は再び振り出しに戻ってしまいました。私の出番が来た時、ザッパは"The Black Page"(※4拍子のリズムの中に連符が大量に盛り込まれたドラマー泣かせの難曲)の楽譜を初見で演奏することを私に要求しました。私は2ライン目に差し掛かったあたりで演奏を辞めました。フランクは「どうした?」と尋ねてきて、私は「初見で演奏するには難しすぎるが、多分演奏出来るかもしれない」と返答しました。彼は「ヴィニー(カリウタ)は初見で演奏した」と言い、それに対し「馬鹿げてる、この曲を初見で演奏出来るドラマーが居るわけがない」と私は言い返しました。フランクはずっと"The Black Page"の演奏を要求していました(ヴィニーはテリー・ボジオが録音したライブ演奏を聞いて"The Black Page"を覚えたと後に私に教えてくれました)。この初見での演奏はおしまいになって、フランクは「やっぱり君は読めないんだな」と言い放ちました。私は「楽譜は読める、他の楽曲を演奏したい」と要求しましたが、却下されてしまいました。なので、私は積み重ねてあった楽譜から他の楽曲の楽譜を抜き取り、それを初見で読んで演奏しました。彼はその演奏を気に入り再びオーディションに来るよう私に言いました。次の日のオーディションはジャズではなくロック系の曲を演奏するもので、ハードロックバンドで何度も演奏してきた私には簡単でした。一方で、ほかの多くの大物ドラマーたちは皆ジャズやファンク畑、スタジオミュージシャンの連中で、ロック物は演奏出来ませんでした。私はこのオーディションの間ずっと黙っていたので、フランクが私のところに来て「今回のツアーに参加したくはないか?」と言いました。私は「フランク(彼はギタリストに転向する前は元々ドラマーでした)がどれほど厳しい男なのか」についての恐ろしいオーディション話に終わってしまうのではなく、ツアーに参加するチャンスがあるなんて未だに考えていませんでした。私は「もちろん」と返答しました。
 それから数日後にフランクが電話してきて、これからバンドがフルプロダクションでのリハーサルに入り、私と他の候補者(Sinclair Lott)のどちらかがドラマーとして採用される、ということを伝えてきました。フランクはその候補者を先に、その後私を参加させるつもりでした。彼らがリハーサルを始める予定だった日にまたフランクから電話が掛かってきて、「もう一人のドラマーが消えちまった。昼食の休憩を取ってたらそいつが帰ってこなかったんだ!明日来てくれないか?」と提案してきたのです。
ということで、私は自分のドラムキットを運んできて、それからフランクが楽曲を電話越しに伝えてくれました。知らない曲でした。フランクはまた別の楽曲も伝えてくれましたが、それも分かりませんでした。彼はさらにもう1曲教えてくれましたが、ダメでした(私は『オーバーナイトセンセーション』以来彼の音楽を聴いていなかったのです)。彼は「どの曲なら知ってるんだ?」と言い、私達は『オーバーナイト~』の楽曲をいくつか演奏しました。いくつか新曲を試しに演奏してから、彼は私にツアーの参加を打診してきました。私は信じられませんでした!もちろんこれはツアーの前にヴィニー(カリウタ)がフランクに賃上げ交渉をしようとして解雇されてしまったおかげなのですが。私は10日間の間に2時間のライブのセットを覚えなければなりませんでした!それはもはやマザーズ・オブ・インベンション(発明の母)ではなく、ブラザーズ・オブ・リテンション(記憶の兄弟)でした!ハ!しかしそれは人生における最高の音楽体験でした。フランクは非常に厳しい人でしたが、誠実かつ公平で、一緒に仕事するのが大変な人間というわけでは無かったです。彼は私に良くしてくれて、私がテレビやスタジオでの仕事をするようになってからもずっと親しい真柄でした。フランクが亡くなる約半年前に彼の家に立ち寄れたのは嬉しかったです。存命中に彼に対して敬意を払うことが出来て本当に良かったです。彼が安らかに眠らんことを…



おまけでデヴィッド・ローグマンの対抗馬だったSinclair Lottのインタビューも和訳しました。

(June 2005)
 フランクはツアーのために新しいドラマーを見つけ、出来るだけ早くリハーサルを始めるための時間に追われていたので、オーディションは強制的な形で行われました。私はオーディションのことを聞き、参加することにしました。それはロサンゼルス中のドラマーが姿を見せ、多くのドラマーがオーディションのためにLAまで飛んでくるような、4日か5日間続いた極めて大規模なオーディションでした。
 全員同じドラムキットで演奏しましたが、多くの参加者の演奏が30秒以上続くことはありませんでした。フランクは彼が求めている音が聞こえないと、バンドの演奏を止めて、その候補者にお礼を言って、次のドラマーの方に移動したのです。私の出番が来た時、彼は楽曲のリズム構成をすぐに私に伝えました。それは私が記憶している限りでは2拍子か3拍子の変なグルーヴで、正確には覚えていませんが、4拍子では無かったです。
 私達が最初の曲を終えた後、彼は別の楽曲をカウントし始めました。私達がその曲も終えた時、彼は"The Black Page"のコピーを私に渡して初見で演奏できるかどうか尋ねました。私は「もちろん、問題ないです」と言いましたが、それは完全なる嘘でした。聴いたことがなかったし、こんな曲をなんとかやり抜こうとしている時に嘘をつくつもりもまったくありませんでした(※ここの訳微妙です。ごめんなさい。)
 とにかく、彼は私にバンドに参加するよう言い、数日間のリハーサルに参加出来るかどうか尋ねてきました。私達は『ユー・アー・ホワット・ユー・イズ』の全ての楽曲をリハーサルしましたが、それから彼は電話を掛けてきて、ツアーには別のドラマーが参加するという旨を私に伝えてきました。
少しショックでしたが、それから3週間も経たない内に私はフレディー・ハバード・クインテットのヨーロッパツアーとレコーディングに参加しました。
 私は現在ロサンゼルスでプロとして演奏していて、今年の9月に私の楽曲が収録されたCDが発売される予定です。


 Sinclair Lottのインタビューを読む限りはリハーサル中に脱走したわけでは無さそうですが、実際はどうだったんでしょうね?気になります。

2014-08-08

少年犯罪をテーマにした楽曲(Oingo Boingo - Only a Lad と Warren Zevon - Excitable Boy)

今回は少年犯罪をテーマにした2曲を和訳してみました。本当はOnly a Ladだけ和訳する予定だったのですが、歌詞の主題が似ているということでExcitable Boyの方も載せることにしました。


Oingo Boingo - Only a Lad





Johnny was bad, even as a child everybody could tell
ジョニーはワルガキで有名だった
Everyone said if you don't get straight you'll surely go to hell
皆口々に「更正しなけりゃお前は間違いなく地獄行きだ」と言った
But Johnny didn't care
しかしジョニーは気にも留めなかった
He was an outlaw by the time that he was ten years old
彼は10歳の時点で既にアウトローだった
He didn't wanna do what he was told
言われたことをしたがらない
Just a prankster, juvenile gangster
いたずら者の早熟なギャングだった

His teachers didn't understand
先生達は彼に理解を示さなかった
They kicked him out of school
彼を退学処分にした
At a tender early age
多感な時期に
Just because he didn't want to learn things
彼の勉強嫌いが原因だった
Had other interests
それに彼は別の物事に興味があった
He liked to burn things
物を燃やすのが好きだったのだ!

The lady down the block
その女性は通りを歩いていた
She had a radio that Johnny wanted
ジョニーが欲しかったラジオを持って
oh so bad
ああ、なんという不運だ
So he took it the first chance he had
だから彼は最初にラジオを奪って
Then he shot her in the leg
それから彼女の脚を撃った
And this is what she said
そして彼女はこう言った

"Only a lad"
「彼はまだ子供なのよ」
You really can't blame him
彼を責めることは出来ない
"Only a lad"
「彼は少年なのよ」
Society made him
社会が彼を産んだのだ
"Only a lad"
「将来がある若者なのよ」
He's our responsibility
責任は我々にあるのだ

"Only a lad"
「彼はまだ子供なのよ」
He really couldn't help it
彼は本当に我慢出来なかったのだ
"Only a lad"
「彼は少年なのよ」
He didn't want to do it
彼はやりたくてやったわけではない
"Only a lad"
「将来がある若者なのよ」
He's underprivileged and abused
彼は恵まれない境遇で虐待を受けていたのだ
Perhaps a little bit confused
おそらくちょっと混乱してしまったのだ

His parents gave up they couldn't influence his attitude
両親は彼を更生させることを諦めた
Nobody could help the little man had no gratitude
謝意を持ち合わせていないこの少年を誰も助けることが出来なかった
And when he stole the car
そして彼が自動車を盗んだ時
Nobody dreamed that he would try to take it so far
彼が自動車をはるか遠くまで持って行こうと考えたなんて誰も想像できなかった
He didn't mean to hit the poor man who had to go and die
彼は死ぬ運命にある貧しい男を殴るつもりではなかったのだ
It made the judge cry
話を聞いた裁判官は泣いてしまった

"Only a lad"
「彼はまだ子供だ」
He really couldn't help it
彼は本当に我慢出来なかったのだ
"Only a lad"
「彼は少年なのだ」
He didn't want to do it
彼はやりたくてやったわけではない
"Only a lad"
「将来有望な若者なのだ」
He's underprivileged and abused
彼は恵まれない境遇で虐待を受けていたのだ
Perhaps a little bit confused
おそらくちょっと混乱してしまったのだ

It's not his fault that he can't behave
礼儀正しく出来ないのは彼の過失ではない
Society made him go astray
社会が彼をダメにしてしまったのだ
Perhaps if we're nice he'll go away
おそらく我々が誠実に接していれば彼はあんなことをせずに済んだはずだ
Perhaps he'll go away
あんな事件は起きなかったはずなのだ
He'll go away
あんなことは…

"Only a lad"
「彼はまだ子供なのよ」
You really can't blame him
彼を責めることは出来ない
"Only a lad"
「彼は少年なのよ」
Society made him
社会が彼を産んだのだ
"Only a lad"
「将来がある若者なのよ」
He's our responsibility
責任は我々にあるのだ

Hey there Johnny
おいそこのジョニー
you really don't fool me
バカにするんじゃねえぞ
You get away with murder
君は殺人を犯して逃げた
And you think it's funny
そしてアンタはそれを面白いと思っている
You don't give a damn if we live or if we die
俺たちが生きようが死のうがどうでも良いと思ってるんだ
Hey there Johnny boy
おいそこのジョニーボーイ
I hope you fry!
処刑されてしまえ!

 Oingo Boingoに関しては、この前の記事で"Little Girls"というロリコンソングを和訳しましたが、こちらも過激ですね。


Warren Zevon - Excitable Boy




Well, he went down to dinner in his Sunday best
彼はよそ行きの服を着てディナーへ行く
Excitable boy, they all said
キレやすい少年と皆が呼ぶ
And he rubbed the pot roast all over his chest
そして彼は胸中にポットローストを塗りたくった
Excitable boy, they all said
キレやすい少年って皆が言うんだ
Well, he's just an excitable boy
奴は単にすぐ興奮しちゃうガキなんだ

He took in the four A.M show at the Clark
彼は午前4時にクラークの劇場へ行った
Excitable boy, they all said
キレやすい少年と皆が呼ぶ
And he bit the usherette's leg in the dark
そして彼は暗がりで案内嬢の脚に噛み付いた
Excitable boy, they all said
キレやすい少年って皆が言うんだ
Well, he's just an excitable boy
奴は単にすぐ興奮しちゃうガキなんだ

He took little Suzie to the Junior Prom
彼はスージーをプロムへ連れて行った
Excitable boy, they all said
キレやすい少年と皆が呼ぶ
And he raped her and killed her, then they took her home
そして彼は彼女をレイプして殺し、家まで送ってあげた
Excitable boy, they all said
キレやすい少年って皆が言うんだ
Well he's just an excitable boy
彼は単に興奮しやすいガキなんだよ

After ten long years they let him out of the home
彼は10年という長い月日を経てシャバに戻った
Excitable boy, they all said
キレやすい少年と皆が呼ぶ
And he dug up her grave and built a cage with her bones
そして彼はスージーの棺を掘り返し彼女の遺骨で籠を作った
Excitable boy, they all said
キレやすい少年って皆が言うんだ
Well he's just an excitable boy
奴は単にすぐ興奮しちゃうガキなんだ


 この両者の歌詞に共通している点としては、過激な行いをする少年に対して「Only a lad」や「he's just an excitable boy」という言葉で片付けてしまう周りの大人たちの認識の甘さにあります。しかし"Only a Lad"では曲の最後で「お前みたいなクソガキは処刑されてしまえ」と本音をぶちまける形式を取っており、当初は少年の行いに寛容だった流れから突如態度が変貌してしまう構成が面白いです。Oingo Boingoの1stアルバム『Only a Lad』には"Little Girls"や"Only a Lad"以外にも"Capitalism"(資本主義バンザイ!)や"Imposter"(ロック評論家をバカにした曲)などの歌詞がかなり危ない曲も収録されているので(2nd以降はそういう歌詞も鳴りを潜め、ある意味まともになっていきます)、米国のニューウェーブ系バンドが奏でるサウンドだけでなく歌詞に注目して聴くのも楽しそうですね。ところで、オインゴ・ボインゴの和訳付き日本盤って出たことあるんですかね?

"Excitable Boy"は1978年にアサイラム・レコードから発売されたWarren Zevon(ウォーレン・ジヴォン)のアルバム『Excitable Boy』の表題曲ですが、シンプルで陽気なピアノロックのサウンドに乗せて、サイコパスの少年の異常な行動を淡々と歌い上げるという、サウンドと歌詞の対比が見事です。『Excitable Boy』は有名曲"Werewolves of London"も収録されている素晴らしいアルバムで、私の愛聴盤でもあります。アサイラム系でもJackson Browne、The Eaglesあたりはあまり好きではないんですが、同じくアサイラムに所属していたTom WaitsやJoni Mitchellと並んでWarren Zevonは私のお気に入りです。ジャクソン・ブラウンの親友ということもあり(路頭に迷っていたジヴォンを支援したのがブラウンでした)サウンドはピアノ弾き語り系のシンガーソングライターのそれなんですが、地声が低めかつ歌い方がワイルドということもあってかなり特徴的です。このアルバムではリンダ・ロンシュタットやスティーヴィー・ニックスのサポートで有名なギタリスト、ワディ・ワクテルのプレイも光ってます。私はOriginal Album Seriesの廉価版5CDセットを買ってウォーレン・ジヴォンに嵌ったクチですが、Amazonの海外のマーケットプレイス経由なら新品を2000円程度(送料込み)でまだ買えるみたいです。もしかしたらタワレコとかにもあるかもしれませんね。聴きやすくて面白いミュージシャンなので是非ご一聴を。

2014-08-07

Frank Zappa - I'm the Slime(和訳)







Frank Zappa - I'm the Slime


I am gross and perverted
オレは下品かつ外道だ
I'm obsessed 'n deranged
取りつかれて狂ってるんだ
I have existed for years
何年にも渡って居座ってきたが
But very little had changed
ほとんど変わっちゃいねえ
I am the tool of the Government
オレは政府の手先で
And industry too
業界ともグルだ
For I am destined to rule and regulate you
それはオレがお前を牛耳り支配する運命にあるからだ

I may be vile and pernicious
オレは卑劣で有害なのかもしれない
But you can't look away
でもお前らは視線をそらすことが出来ない
I make you think I'm delicious
お前らに美味しいと思わせてやる
With the stuff that I say
オレの話術でな
I am the best you can get
オレはお前らが手に入れられる最高のシロモノだ
Have you guessed me yet?
オレが誰か分かったか?
I am the slime oozin' out from your TV set
テレビから流れ出るスライムだぜ

You will obey me while I lead you
お前らはオレの指示に従わなければならない
And eat the garbage that I feed you
そしてオレが与えるゴミを食べ続けるんだ
Until the day that we don't need you
我々がお前らを必要としなくなる日まで
Don't got for help...no one will heed you
助けを求めてもムダだ…誰もお前なんて気に留めない
Your mind is totally controlled
お前らの心は完全にコントロールされて
It has been stuffed into my mold
オレの型にはめられてしまっている
And you will do as you are told
言われた通りのことをしろ
Until the rights to you are sold
お前らの権利が売られるまでな

That's right, folks..
その通りだ、みなさん
Don't touch that dial
チャンネルはそのまま!

Well, I am the slime from your video
オレはテレビのスライム
Oozin' along on your livin'room floor
お宅のリビングの床に滴り落ちるぜ
I am the slime from your video
オレはテレビのスライム
Can't stop the slime, people, lookit me go
スライムは止められないぜ、みんなオレを見てくれ


左上からラルフ・ハンフリー(Dr)、トム・ファウラー(Bass)
イアン・アンダーウッド(Flut, Clarinet & Sax)、ジョージ・デューク(Key & Synth)
ジャン=リュック・ポンティ(Violin)、ブルース・ファウラー(Trombone)
FZ(Guitar & Vocals)、ルース・アンダーウッド(Marimba, Vibes & Percussion)
 『Over-nite Sensation』と言えばポップ路線に転じたことで商業的な成功を収めた、ザッパの音楽キャリアにおけるターニングポイントとなった作品ですが、今回はその中から"I'm The Slime"を取り上げてみました。本作の収録曲はすべて歌物で、マザーズ時代に比べるとはるかに分かりやすいコンパクトな作風となっていますが、上記のようなユニークな歌詞と猥雑でカッコいいギターソロが歌モノの楽曲にある種のザッパらしさを漂わせています。
以前のCDのミックスは低音がこもり気味で全体的にもっさりとした感がありましたが、2012年リマスター盤では音のヌケが良くなり大変聴きやすくなりました。既にアルバムを持っている方も持っていない方も2012年リマスター盤の購入をおすすめしますよ。

 記事の最初に貼った映像は76年にサタデー・ナイト・ライブに出演した際の演奏です。ザッパはSNLに76年12月、78年10月と2度出演しており、バンド演奏だけでなくいくつかのコントにも参加するなど、このコメディ番組に対する熱意はただならぬものだったようです。SNLは伝説のコメディ番組としてお馴染みですが、音楽的側面においても功績がある番組です。ゲストとしてミュージシャンが毎回の放送で招かれ、数曲演奏を披露しています。SNLはコメディ番組としての質の高さはもちろん、様々なミュージシャンにテレビで演奏する機会を与えていたという点においても歴史的価値がある番組だったのかなと思います。キャプテン・ビーフハートやサン・ラといったカルト的ミュージシャンが出演している回もあったりするので本当にビックリします。
 今回取り上げた映像の面白いところは、"I'm The Slime"というテレビ批判の歌をテレビで生演奏してしまうという点にあります。「テレビから流れ出る粘着物(=スライム)」という歌詞に沿った演出までやってしまうのですから、ミュージシャン側・テレビ側双方の本気っぷりが伺えます。また、アナウンサーのドン・パルドがナレーションを担当してますが、同年の12月末に行われたザッパのニューヨークコンサートにもゲスト参加しており、その模様は名ライブ盤"Zappa In NY"で聴くことが出来ます。この76年のSNL出演では他にもキャッチーで美しい名曲"Peaches En Regalia"や、SNLのレギュラーメンバーだったジョン・ベルーシが演奏するムチャクチャなサックスにバックバンドが合わせる"Purple Lagoon"の演奏もあったりして、大変興味深いです。特にこの時の"Peaches En Regalia"は私がザッパを聴くきっかけとなった映像であり、大変思い出深いです。



 78年の出演では"Dancin' Fool"、"The Meek Shall Inherit Nothing"というポップな歌物を演奏している一方で、インストの"St. Alphonso Pancake Breakfast"メドレーではバカテクメンバーが凄まじい演奏を披露しており、また、前回同様ジョン・ベルーシがサムライに扮してバンドを盛り上げます。特にくわえタバコでものすんごいドラムを叩くヴィニー・カリウタ、変態ベースを奏でるパトリック・オハーンのプレイは見ものです。しかしこのザッパがホストを務めた2回目のSNL出演は評判が悪いらしく、歴代最低のサタデーナイトライブのホスト10人」や「70年代SNLのひどいホスト5人」という英語記事に2回目の出演がランクインしていました。記事によると、ザッパが台詞をわざと棒読みしたり、コント中に「今カンペ読んでる」と言ってしまったりと終始白々しい態度を取ったのが良くなかったようです。また、「SNLを出禁になった9人」という記事の筆者はSNLのプロデューサー、ローン・マイケルズに対し「反体制のフリークキングとして悪名高かった頃のザッパを司会に据えるという選択が、どうしてあなたはうまく行くと思ったのだろうか?」と批判をしています
 そんなザッパバンドのSNLにおける素晴らしい演奏ですが、SNL関連の動画は権利関係が厳しいらしくYoutubeにはほとんどアップロードされていません。しかしながら、ニコ動では画質の良い演奏が多く上がってますので、是非とも「zappa snl」と検索して色々な動画を観てみてください。面白いですよ。

2014-06-09

Captain Beefheart - Tropical Hot Dog Night (和訳)

ビーフハート流ダンスナンバーです



Tropical Hot Dog Night
トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト
Like two flamingoes in a fruit fight
果実を争う二羽のフラミンゴのように 
Ev’ry colour of day whirlin’ around at night
1日の全ての色彩が夜に渦巻いている
I’m playin’ this music
オレはこの音楽を演奏してんだ 
So the young girls will come out
だから若い娘たちもやってくるのさ
To meet the monster tonight
今夜モンスターに会いにね
Tropical Hot Dog Night
トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト

Like two flamingoes in a fruit fight
果実を争う二羽のフラミンゴのように 
I don’t wanna know ‘bout wrong or right
正しいか間違ってるかなんてオレは知りたくねえ
I don’t want to know
知りたくねえんだ
- I’m anywhere tonight
今夜オレはどこかしらの場所に居るんだ

Tropical Hot Dog Night
トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト
Like two flamingoes in a fruit fight
果実を争う二羽のフラミンゴのように 
Like steppin’ out of a triangle into striped light
三角形が縞模様の光へと変わっちまうように
Striped light, striped light
縞模様の光、縞模様の光にな
Tropical Hot Dog Night
トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト
- Everything’s wrong, at the same time it’s right
万物は間違っていると同時に正しくもある

The truth has no patterns for me tonight
真実なんてものは今夜のオレには存在しないんだ 
I’m playing this music
オレはこの曲を演奏してるんだ 
So the young girls will come out
だから若い娘たちもやってくるのさ
To meet the monster tonight
今夜モンスターに会いにね
Meet the monster tonight
モンスターに会いに

What do all you women do when the men get Tropical Hot Dog payday?
男たちがトロピカル・ホット・ドッグ給料日を迎える時、お前たち女どもは何をするんだ?
What do you do on Tropical Hot Dog day day?
トロピカル・ホット・ドッグの日にお前は何をするんだ?
Yay; Yay

Step out of a triangle into striped light
三角形が縞模様の光に変わっちまう
Turn around and step back into striped light
回転して縞模様の光に逆戻りするんだ
Tropical Hot Dog Night
トロピカル・ホット・ドッグ・ナイト

I’m playin’ this song
オレはこの曲を演奏してんだ 
For all the young girls to come out to meet the monster tonight
今夜モンスターに会いにやってくるすべての若い娘のためにな
Meet the monster tonight
モンスターに会いに

How would you like to be the lucky girl,
ラッキーガールになりたくはないかい?
The lucky one?
ラッキーな奴に
- To be the monster tonight
今夜、モンスターになるためにな
Ow, to be the monster tonight
モンスターになるために
Oh, everything’s wrong, at the same time it’s white!
万物は間違っていると同時に潔白でもあるんだ!
You get to be – you get to be – with me
オレと一緒に…一緒に居てくれないか
And also to be the monster tonight
そして今夜モンスターになるのさ




 キャプテン・ビーフハートの大傑作"Shiny Beast (Bat Chain Puller)"収録のダンスナンバーを和訳しました。レベルの高い楽曲と演奏、そして取っ付き易さを兼ね備えたこのアルバムは"Trout Mask Replica"や1stの"Safe As Milk"、次作の"Doc At The Radar Station"あたりと比べると知名度が低いような気もします。ビーフハートの音楽にどっぷり浸かっている現在の自分からすると良い思い出の一つとも言えますが、私は高校時代にビーフハート初体験の作品としていきなり悪名高い"Trout Mask Replica"を聴いて大混乱した経験があります。もし最初に聴いたアルバムがこの"Shiny Beast"であったならば、一部のビーフハート作品に存在する前衛性や難解さというものを排除して、すんなりとビーフハートのカッコ良い音楽に馴染んていけたのではないかと思われます。ビーフハートを聴いたことのない人にも自信を持っておすすめできるくらい、"Shiny Beast"はキャッチーであり、大変質の高い作品です。
 さて、今回和訳した"Tropical Hot Dog Night"ですが、個人的にはビーフハートの楽曲の中でもトップ3に入るお気に入りの曲です。反復されるギターリフと陽気なトロンボーン、リズミカルなドラムパターン、南国(Tropical)を思わせるマリンバの音、そしてビーフハートの勢いのあるボーカルとユニークな歌詞…ヴァージン時代の不遇な2作品と契約関係での争いを全て無にして最高の再スタートを切ったアルバムを象徴する、ノリの良い楽曲です。出だしの"Tropical Hot Dog Night / like two flamingoes in a fruit fight"というフレーズは本当に見事ですね。「果実を争う二羽のフラミンゴのように」…こんな歌詞を思いつくミュージシャンはビーフハート以外居ないでしょう。"I’m playin’ this music / so the young girls will come out / to meet the monster tonight"というフレーズもノリの良い演奏と相まって実にカッコいいですね。突然"Everything’s wrong, at the same time it’s right"という哲学的なフレーズも出てきたりして、このあたりも作詩や作画に長けた芸術畑の人間であるビーフハートが作る歌詞の面白いところですね。

 "Shiny Beast"の最後に"Apes-Ma"という短い詩の朗読が挿入されています。せっかくですのでこちらを和訳したものも紹介したいと思います。

 

Apes-Ma, Apes-Ma
エイプス・マ、エイプス・マ
your cage is too dirty, Apes-Ma
ちょっと君の檻は汚れすぎなんじゃないかな、エイプス・マ
Remember when you were young Apes-Ma?
若いころを覚えているかい、エイプス・マ?
And you used to break out of your cage?
前はよく檻から脱走したものだったね
Well you know that you’re not strong enough to do that anymore now
君はもうそういうことが出来るほど強くはないんだよ
And Apes-Ma… The little girl that named you years ago died now
してエイプス・マ…君を名づけた少女は数年前に死んだよ
And you’re older Apes-Ma
君は年を取ってしまったね、エイプス・マ
Remember when she named you and it was in the paper Apes-Ma?
彼女が君に名前をつけた時、新聞に載ったことを覚えているかい、エイプス・マ? 
Apes-Ma, Apes-Ma
エイプス・マ、エイプス・マ
You’re eating too much
食べ過ぎだよ
And going to the bathroom too much Apes-Ma
トイレも近くなったんじゃないかな、エイプス・マ
And Apes-Ma, your cage isn’t getting any bigger Apes-Ma
エイプス・マ、もう君の檻はこれ以上大きくならないんだよ、エイプス・マ


年老いた猿に思い出話をする動物園の老飼育員…という光景が目に浮かぶ、シンプルで素晴らしい詩です。こうした芸術的な感覚を持ち合わせたビーフハートが音楽家として大変ユニークな存在であったことをこの詩を通じて実感させられます。

 最近は和訳ブログと化していますが、他所のブログで和訳されないような楽曲の和訳をどんどんやって行きたいと考えています。稚拙な翻訳ですが、よろしくお願いします。

2014-06-05

Oingo Boingo - Little Girls

ロリコンの歌です



I, I, I love little girls
小さな女の子たちが大好きなんだ
They make me feel so good
気持ち良くさせてくれるからね
I love, little girls
小さな女の子たちを愛してる
They make me feel so bad
気分を害することもあるけどね

When they're around
彼女たちが周りにいると
They make me feel like I'm the only guy in town
この町に居る唯一の男みたいな気分にさせてくれるんだ

I, I, I love little girls
小さな女の子たちが大好きなんだ
They make me feel so good
気持ち良くさせてくれるからね

They don't care if I'm a one-way mirror

僕がマジックミラーみたいな男だとしても彼女たちは気にしないし
They're not frightened by my cold exterior
僕が冷たい表情を浮かべても怖がったりしないのさ

They don't ask me questions

彼女たちはいちいち僕に尋ねたりはしないんだ
They don't want to scold me
叱ろうともしないし
They don't look for answers
返答を求めたりしない
They just want to hold me
ただ僕を抱きしめたいだけなのさ

Isn't this fun

楽しくないのかい?
Isn't this what life's all about
これこそが人生じゃないのかい?
Isn't this a dream come true
夢が叶ったんじゃないのかい?
Isn't this a nightmare too
これは悪夢でもあるのかい?

I, I, I love little girls
小さな女の子たちが大好きなんだ
They make me feel so good
気持ち良くさせてくれるからね
I love, little girls
小さな女の子たちを愛してる
They make me feel so bad
気分を害することもあるけどね

When they're around
彼女たちが周りにいると
They make me feel like I'm the only guy in town
この町に居る唯一の男みたいな気分にさせてくれるんだ

I, I, I love little girls
小さな女の子たちが大好きなんだ
They make me feel so good
気持ち良くさせてくれるからね

They don't care about my inclinations

彼女たちは僕の性癖を気にしないし
They're not frightened by my revelations
僕の暴露にも怖がったりしないのさ 

Uh oh (uh oh), take a second (take a second)
おっと、ちょっと休憩しよう
Uh oh (uh oh), it's a mistake (it's a mistake)
おっと、間違えちゃったよ
Uh oh (uh oh), I'm in trouble (I'm in trouble)
おっと、困っちゃったな
Uh oh (uh oh), the little girl was just too little 
おっと、彼女たちは小さすぎるんだよ
Too little, too little, too little, too little
小さすぎるんだ!

Isn't this what life's all about
これこそが人生じゃないのかい?
Isn't this a dream come true
夢が叶ったんじゃないのかい?
Isn't this a nightmare too
これは悪夢でもあるのかい?

And I don't care what people say
人が何を言おうと気にしないよ
And I don't care what people think
人が何を考えていようとね
And I don't care how we look walking down the street
通りを歩く時だって僕らがどんな見かけだろうと気にしないよ

They don't care if I'm a one-way mirror
僕がマジックミラーみたいな男だとしても彼女たちは気にしないし
They're not frightened by my cold exterior
僕が冷たい表情を浮かべても怖がったりしないのさ

They don't (they don't), ask me questions (ask me questions)
彼女たちはいちいち僕に尋ねたりはしないんだ
They don't (they don't), want to scold me (want to scold me)
叱ろうともしないし
They don't (they don't), look for answers (look for answers)
返答を求めたりしない
They just (they just), want to hold me (want to hold me)
ただ僕を抱きしめたいだけなのさ

Uh oh (uh oh), I'm in trouble (I'm in trouble)
おっと、困っちゃったな
Uh oh (uh oh), the little girl was just too little 
おっと、彼女たちは小さすぎるんだよ
Too little, too little, too little, too little
小さすぎるんだ!小さすぎるんだ!小さすぎるんだ!小さすぎるんだ!
Too little, too little, too little, too little
小さすぎるんだ!小さすぎるんだ!小さすぎるんだ!ちっちゃすぎ!

Isn't this what life's all about
これこそが人生じゃないのかい?
Isn't this a dream come true
夢が叶ったんじゃないのかい?
Isn't this a nightmare too
これは悪夢でもあるのかい?

I, I, I love little girls
小さな女の子たちが大好きなんだ
They make me feel so good
気持ち良くさせてくれるからね
I love, little girls
小さな女の子たちを愛してる
They make me feel so bad
気分を害することもあるけどね

When they're around
彼女たちが周りにいると
They make me feel like I'm the only guy in town
この町に居る唯一の男みたいな気分にさせてくれるんだ


I love (I love), little girls
小さな女の子たちを愛してる
They make me feel so good
気持ち良くさせてくれるからね
I love
大好きなんだ


 前回のWall Of Voodoo同様、ニューウェーブ系バンドの演奏を集めた映画"Urgh! A Music War"のDVDを観てからハマってしまったOingo Boingo。ニューウェーブの色合いが強かった1stアルバムの冒頭を飾る一曲"LIttle Girls"を和訳しました。


映画「Urgh! A Music War」で"Ain't This The Life"を演奏するOingo Boingo

Oingo Boingoとは、今や映画音楽の作曲家として超売れっ子となったダニー・エルフマン率いる、コミカルでレンジの広いエルフマンのボーカルとスティーヴ・バーテックのセンスあるギタープレイ、そしてホーン隊が魅力の一部でカルト的人気を誇るアメリカのニューウェーブ系バンドです。
ミュージックビデオの監督はOingo Boingoの創設者でダニーの兄でもある映画監督のリチャード・エルフマンが担当しており、同監督作のカルト映画「Forbidden Zone」同様、大変趣味の悪い(褒め言葉)映像に仕上がっています。タンクトップ姿のダニーが気持ち悪い笑みを浮かべながらlittle girlsへの愛を謳い上げ、その周りを満面の笑みで小人症の男性4人が囲むというあまりに悪趣味な映像のせいか、カナダでは放送禁止になったそうです。個人的にはこのとびっきりの笑顔を見せる小人症の男性の皆さんが大好きです。また、ダニーのコミカルで表情豊かな演技はXTCのアンディ・パートリッジが"Making Plans For Nigel"のPVで見せた素晴らしい名優っぷりを彷彿とさせます。特にダニーが最後にドアを閉める直前に見せるクネクネとしたダンスが気持ち悪くて最高です。

 
まるで俳優のようなアンディ・パートリッジの演技

この曲の歌詞の面白いところは、単にLittle Girlsがいわゆる「幼女」を指すだけではなく、「背の小さい女性」のことを指しているようにも取れるというダブルミーニングにあります。小人症の男性たちを出演させたのは、その暗示なのかもしれません。どっちにしろ"I love little girls / They make me feel so good"というのはあまりにもド直球な歌詞ですね。
キャッチーな曲調で性癖を高らかに歌い上げる曲…というと、フランク・ザッパフリークの私は"He's So Gay(彼はとってもゲイ)"という曲を連想してしまいます。



ちなみにこんな記事を書いておいてアレですが、私はまったくロリコンではございませんのでネットポリスの皆さん今回は見逃して下さい。お願いします。

2014-04-29

Wall Of Voodoo - Back In Flesh

会社に行きたくない男の歌です



Someone smashed my alarm
誰かが俺の目覚まし時計をぶっ叩く
It's got me on the edge
それが俺を窮地に立たせるんだ
You know it's so sharp (Aaaaaaaa...)
あんたはそれが辛いことだって知ってるだろ(あああああ…)
And you know I won't go
>そんで、俺が出社しないってことあんたは分かってるんだろ
You know I won't go
出社しないって
I don't wanna go (He won't go)
俺は行かないぜ(彼は行かないよ)
The corporation's boiling over
会社は激怒し
Everybody's taking over
オレの仕事をみんなが引き継いでる

And I'm back in flesh

そして俺は肉体に戻るんだ
Back in flesh
肉体へ戻っていく
Back in flesh
肉体に回帰するんだ
Back in flesh
肉体へとな
Back in flesh
肉体に

You better sign your time card now

さっさとタイムカードに記名した方がいいぞ
They don't care about you anyhow
どうせ彼らは君のことなんて気にかけてないんだから
Sign in, your minimum cut
記名しろ、ちっぽけなマヌケ
You're late again, your salary's cut!
また遅刻したな、減給だ!

I won't go (He won't go.)

俺は行かないぜ(彼は行かないよ)
I don't wanna go (You must go!)
行きたくないんだ(君は出社しなければならない!)
Is it time to go? (The orders are in!)
もう行く時間かい?(命令が来てるぞ!)
Well, I'd rather go bowling! (The lanes are closed!)
ボーリングに行きたい!(ボーリング場は閉まってるぞ!)
Maybe a little tennis? (Your racket's got a hole.)
じゃあ軽くテニスは?(ラケットに穴が開いちゃってる)
How about some baseball? (Field's rained out.)
野球なんかはどう?(グラウンドは雨でビシャビシャ)
Maybe a little fishing? (The fish are on vacation.)
じゃ釣りに行く?(魚は休暇中だ)
Well, how about some golfing? (The greens are overgrown.)
ゴルフは?(グリーンが生い茂っちゃってる)
Well, what about some swimming? (I don't think so!)
では水泳は?(嫌だね!)
Well, what about thisand that (No, no, no, no, no!)
じゃあアレとコレは?(ダメダメダメダメダメ!)
Well, you can't tell me what to do!
じゃあどうすりゃいいんだよ
Well, you can't tell me what to do!
教えてくれよ!
(Hey, fuck you!)
(おい、お前なんかくたばっちまえ!)


ニューウェーブ系バンドの演奏を集めた映画"Urgh! A Music War"のDVDを観てから妙にハマってしまったWall Of Voodoo。普段あんまり曲の和訳とかはやらないんですが、歌詞が面白かったんでやってみました。といってもWall Of Voodooの和訳なんて誰が見るんだよ…という話ではありますが。今度"Urgh! A Music War"について書こうかなと思ってます。

※Sign in, your minimum cutのyour minimum cutがよく分からなかったのでマヌケ(=your cut)という訳で誤魔化しました。すみません。

野球シミュレーションゲーム Out Of The Park Baseball(OOTP15)

最近、OOTP15(Out Of The Park Baseball)という野球シミュレーションゲームにハマっている。無料版のOOTP8や有料版のOOTP13でその魅力に取り憑かれて以来、OOTPを毎年のようにプレイしているのだが、今回のOOTP15はNPBやKBO等の海外リーグが実名で収録されておりプレイの幅が今まで以上に広がった。今回から取り入れられている流行のフラットデザイン的なレイアウトもいかにも球団経営シミュレーションらしい趣がある。 日本語版や日本語パッチが無いため日本の野球ファンにはちょっと敷居が高いかもしれないが、「やきゅつく」や「ベスプレ」が好きな方には是非ともやっていただきたいゲームである。MLBの球団でプレイすれば、選手の知識はもちろん、40人ロースターやアクティブロースター、ルール5ドラフト、また選手をマイナー降格させる際の苦悩(主に契約関係)といったMLB独特のルールや仕組みが理解出来るようになるので、現実のMLB観戦がより一層楽しくなる。もちろんNPB球団のGMとしてプレイするのも面白いだろう。しかし、ドイツ製(アメリカじゃないというのが意外ですね)のゲームということもありNPB関係のデータのところどころに不備が見られるので、よりNPBのデータに現実味を持たせてちゃんと遊べるレベルに持っていくためには日本人ユーザーによる修正が求められる。

 より多くの野球シミュ好きの日本人にこのゲームを楽しんでもらいたい、という気持ちから私は昨年からOOTPの解説動画を作ってニコ動にアップしている。正直OOTP8の解説動画はかなり稚拙というか雑というか、非常に分かりにくいものだった思う。ああいう実況動画っぽい感じで説明するというのはダラダラ喋ってればいいので作る側としては楽だが、視聴者の立場からすると退屈なものだ。しかも40分という長時間の動画になってしまうとなかなかしっかりと観てもらえる可能性が低い。今回新たにOOTP15の解説動画を作るにあたって、自分の声で説明するのを辞めた。多少私のaviutlを使った動画編集技術が向上したということもあり、テロップで説明するスタンスを取ることにした。この手のゲームはそういうやり方のほうが分かりやすいし、理想的である。今後は選手ステータスの説明やロースターの入れ替えなどを解説する動画を作り(こんな記事書いてないでさっさと続きの動画を作れよ、という声が聞こえてきそうですが)、動画で説明が不足している部分はwikiやブログで補足していきたい。いずれは日本人同士でオンラインリーグなんかもやってみたいなあ。




ちょっとしたOOTP指南…

OOTPの新作が出る度にMLBのお荷物球団の呼び声高い弱小ヒューストン・アストロズをいかにして勝たせるかという苦行に取り組むのが私のルーティーンなのだが、そのアストロズでのプレイ風景を紹介したいと思う。

初期状態のアストロズは予算も選手総年俸も30球団中29位。最下位はどこ?

アストロズのような球団は主力選手が不足している上に、予算も少ない。そういった球団で大物FA選手を獲得して優勝争いする、高年俸の長期契約を結んで選手を囲む、というある種のゴリ押しプレイを行うのは到底不可能である。ではこのような状況においてどのような指針を元に球団経営を進めればいいのだろうか。私の経験を元に「弱小球団が強くなるための6か条」を考えてみた。

①優秀なスカウトを獲得する
②出来るだけ契約更改が始まる前の選手(MLB最低保証年俸)を起用する
③契約更改で年俸が跳ね上がり、その年俸に見合う活躍が見込めない選手は他球団の若手有望選手とトレードする
③FA選手獲得よりも選手育成にお金をかける
④例外として、中継ぎ投手は安くてコスパが良いのでFAで獲得すると良い
⑤ルール5ドラフトを活用する
⑥首脳陣は出来るだけ優秀な人を集める



優秀なスカウトを獲得する 

OOTPでは選手の能力がスカウトの査定を元に表示される。つまり、選手の能力値をそのまま表示する一般的な野球ゲームとは違い、選手本来の能力は基本的に分からないのだ(コミッショナーモードやスカウト査定の精度(Scouting Accuracy)を弄れば真の能力というのは分かるらしいのだが、それじゃ面白くない)。しかし、優秀なスカウトを雇うことで選手の能力表示の精度は向上する。選手の現在の能力(Overall Rating)と将来の選手像(Potential Rating)を出来るだけ正確に把握することで、誰をスタメンで起用し、または放出するべきか判断出来る。優秀なスカウトがチーム編成の基礎を創り上げるのである。しかしながら、期待していた能力値が高い選手の成績がシーズン通して低調だったり、逆に能力値が低いと考えられていた選手がレギュラーとして好成績をたたき出したり、ということもあったりする。そういうある種の不確実性やもどかしさがOOTPの醍醐味であり、やめられない理由だ。

アストロズスカウトによる査定。
非常に評価が高い。
このような、現在の能力はまだ低いが
Potential Raitingの高い選手がいわゆるプロスペクトと
呼ばれるタイプの選手だ。
OSA(スカウト協会)による査定。評価は低い。
ただし、球団スカウトよりOSAのスカウトによる
査定のほうが正しい場合もある。
両者の査定を見比べることが大事だ。


出来るだけ契約更改が始まる前の選手(MLB最低保証年俸)を起用する

契約更改で年俸が跳ね上がり、その年俸に見合う活躍が見込めない選手は他球団の若手有望選手とトレードする

俺アストロズのエース、ジャレット・コザート投手の調停結果。
チーム提示額の7億2000万円に対し、選手提示額の
9億3750万円が年俸として選択されたというメール内容。
MLB(メジャー)の選手はNPBのように入団1年目から年俸調停に臨めるわけではなくて、その資格を得るためにはMLBでの3年以上の経験、FA権の取得は6年以上の経験が必要となる。MLBでの最初の3年はメジャーが定める最低保証年俸(OOTPの場合は50万ドル≒5000万円)しか貰えない。つまり、最初の3年で選手がどれだけ素晴らしい成績を叩き出そうとも、球団は最低保証年俸を払うだけで済むのだ。現実のMLBで言えば、エンゼルスのマイク・トラウト選手が良い例だ。こうしたMLB歴の浅く有能な選手を重用することは、効率の良いコストマネジメントの手段となる。MLBの年俸調停における調停人は第三者が行い、球団の提示金額と選手の希望金額のどちらかが選ばれる。OOTPにおける年俸調停は、球団側の希望金額を提示すること自体は可能なのだが、経験上、選手の希望額(当然ながら球団のそれより高い)が選択されるケースが多い。そのため、最低保証年俸の時期に大活躍した選手の年俸が5000万円から一気に10億円に跳ね上がる、ということも多々ある。アストロズのような球団の場合、調停によって年俸が跳ね上がった選手を保有することで予算が圧迫され、球団運営が難しくなってくる。間違いなく活躍する選手であればFA権取得まで10億円以上払ってでも雇う価値はあると思うが、あまり年俸に見合った活躍が出来そうにない場合はその選手をトレードに出して10億円を浮かせ、別の経験の浅い若手選手や年俸の安い代替選手を起用したほうがコスト的には有利、ということも考えられる。

FA選手獲得よりも選手育成にお金をかける

例外として、中継ぎ投手は安くてコスパが良いのでFAで獲得すると良い

 高年俸のFA選手と複数年契約したものの怪我で長期離脱、スタメン復帰しても打てない。でも年俸は高いし能力が劣化してるから他球団もトレードに応じてくれない。こんなことになったらアストロズのような低予算チームが暗黒時代に突入してしまうのは火を見るより明らかである。30歳以上の実績のあるFA選手との契約よりも、チームに居るPotential Ratingの高い選手の育成にお金をかける、これこそ低予算チームが生き残る道である。しかし例外もあって、中継ぎ投手に関してはFAで獲得するべきである。何故なら、単年4億以下の年俸で契約してくれる優秀な中継ぎ投手がFA市場に溢れているからだ。万が一獲得した中継ぎ投手が活躍しなかったとしても低年俸で獲得した選手であればダメージは少ない。ちなみに1-20スケールの査定で言えば、コントロールの数値が10以下のノーコン中継ぎ投手の獲得はやめたほうがいいです。FA市場において相場が高騰しがちな先発投手は球団で育成し、コストの掛からない中継ぎはFAで補強、というのが理想的な投手編成であると思われる。

ルール5ドラフトを活用する

 ルール5ドラフトとは簡単にいえば「ある球団で40人ロースターに登録されずに干されてる有望な選手を他球団が救済する」というMLB特有の制度である。40人ロースターとはNPBで言う支配下登録選手枠のことであり、40人ロースターに登録されていない(マイナー契約)選手はアクティブロースターへの登録が出来ないので、MLBの試合に出場することが出来ない。ルール5ドラフトのリストに載る選手というのは、NPBで例えると、ずっと育成契約で一軍の試合に出させてもらえない選手、という感じだろうか。ルール5ドラフト自体の説明は他サイトのほうが詳しいと思うのでそちらにお任せしますが、ともかく他球団の干されてる若手選手を獲得出来るこのルール5ドラフトは赤貧球団にとって非常にありがたい制度である。ただし、ルール5ドラフトで獲得した選手は15日の故障者リスト入りさせる以外はシーズン通じてアクティブロースター(MLB)に登録しておかなくてはならないという制約もある。もしルール5ドラフトで獲得した選手が不調であっても、マイナーリーグに降格させることが出来ない。ルール5ドラフトではMLBの舞台での活躍が本当に見込める選手を見極めて獲得しないと後で痛い目にあう。

首脳陣は出来るだけ優秀な人を集める

 貧乏球団は基本的に育成重視になるので、やはり選手の上に立つ首脳陣は優秀でなくてはならない。コーチの能力は選手のパフォーマンスや成長に影響を及ぼすため、育成費用同様、ここをケチってしまうと若手有望選手の才能を無駄にしてしまう可能性がある。ちなみに、コーチの経験年数はコーチ自身の能力には影響を及ぼさない。経験年数が長いほど要求してくる給料の額が高くなるので、経験年数が少なくて能力の高い指導者を雇用することでコストカットに繋がる。

選手育成画面。全球団の平均は9億円だが、
出来るだけ多くの金額をここでは投資したい。
コーチのプロフィール画面。MLBだけでなくマイナー
下部組織のフロントの人事も管理しなきゃならないので結構面倒。
















ヒューストン・アストロズ育成日記

それではここまで4年間プレーした俺・ヒューストン・アストロズの軌跡を紹介します。

2014年 79勝83敗(.488) 3位      
2015年 83勝79敗(.512) 3位
      
2016年 67勝95敗(.414) 5位
      
2017年 97勝65敗(.599) 1位 PO敗退 

4年目の2017年は首位を独走するも
POで3タテを喰らいあっさり敗退。
初年度はカストロ捕手(.298 25 101 OPS.906)や、コザート投手(17勝9敗 3.06)などの活躍もあり意外にも借金4の3位でフィニッシュ。2年目は打線が低調ながらも
成長著しい切り込み隊長スプリンガー(.221 28 78 OPS.733)やシアトルから移籍したスモーク(.271 30 100 OPS.837)、投手陣ではFAで獲得したシールズ(12勝12敗 3.93)の活躍で貯金4の3位という来季に期待出来る成績。3年目は自分としては優勝を狙える戦力を整えたつもりだったが、まったく投打が噛み合わず67勝95敗(借金28)の最下位。しかしルール5ドラフトでカブスから移籍したボーゲルバッハ一塁手(Dan Vogelbach)は.300 29本 102打点 OPS.859の大活躍でスタメンの座を射止める。スプリンガーも.265 33本 82打点 OPS.839という成績を残し恐怖の1番打者として君臨。投手陣ではエースのコザート(12勝12敗 4.12)、初年度のドラフト1位投手でナックルボーラーのウォーターストン(8勝10敗 4.48)、FAで獲得したケネディ(12勝16敗 4.26)、シールズ(13勝16敗 4.67)がローテーションを守ったものの投手陣全体の防御率が軒並み高く勝率も良くなかった。
 4年目の2017年はアストロズが快進撃を見せたシーズンとなった。まずは2016年のシーズンオフ、チームの不甲斐なさにムカついた俺GMは監督のボー・ポーターを解雇。代わりに35歳のマイケル・ガードナー氏が監督に就任。また、アロンソ一塁手をトレードに出して中継ぎのバーンズ投手を獲得。またシールズやアルチューベなどの選手を放出して予算を確保。既存戦力に期待していたので大胆な戦力補強はしなかった。
シーズン開幕直後、守護神のストリートが怪我で今季絶望となるものの代わりにブロクストンが新守護神の座に収まり、4月中旬から5月にかけて10連勝するなどチームは序盤から絶好調。そのままペナントレースを突っ走り6地区中最速で優勝を決めた。投手陣ではエースのコザートの活躍(14勝5敗3.17)はもちろん、今季大きな飛躍を見せ最終的に19勝9敗3.80という成績でサイヤング賞を受賞したナックルボーラーのウォーターストン、中継ぎ投手としてトレード移籍したものの先発転向に成功し10勝9敗3.55という好成績を残したバーンズ、通年でローテションを守ったケネディ(14勝11敗3.85)の活躍が大きかった。野手陣ではセッチーニ(Cecchini)三塁手とボーゲルバッハ一塁手のルール5ドラフトコンビが大活躍。セッチーニはが2番打者として出塁率.397 OPS.867と素晴らしい結果を残し、ボーゲルバッハ一塁手は本塁打王と打点王を獲得した。シーズン終盤にエースのコザート、1番スプリンガーが残りシーズンはおろかプレーオフにも出られない怪我で離脱したのが響いて、プレーオフではなんと同地区のレンジャーズに3タテを喰らい敗退。貧乏球団らしいプレーオフでの敗退っぷりであった。


ピーター・“ナックジー”・ウォーターストン投手。
初年度ドラフトプールに居た謎の日本人ナックルボーラーを指名し勝手にアメリカ人っぽい名前と風貌に変更した選手。
能力値は弄ってません。ちなみに「ナックジー」はかの有名なナックルボーラー、フィル・ニークロのアダ名から頂戴しました。
球速の平均は80-83マイルという正に典型的なナックルボーラー。たまらん能力と成績。
スタミナも豊富でナックルボーラーらしくイニングを食いまくるのが素晴らしい。
生え抜きでチームの切り込み隊長スプリンガー。
終盤に怪我で離脱したものの、1番打者で32本塁打という恐ろしい成績。
カープの堂林はこんな感じの成績を目指して欲しい。
2年目のオフのルール5ドラフトで獲得した選手①。
弱冠24歳で本塁打王と打点王のタイトルを獲得。
優秀な選手だけに年俸調停の金額が怖いです。
2年目のオフのルール5ドラフトで獲得した選手②。
選球眼の能力値(Eye/Discipline)が高めの優秀な選手です。
出塁率が高く足も遅くはないので理想的な2番打者です。

低予算編成で地区優勝した結果、シーズンスコアが100点中129点を記録しました。
ってそれじゃ100点中じゃないでしょ(笑)

2014-04-19

Captain Beefheart - 『Trout Mask Replica』 1969

「ポップ・ミュージックの歴史に天才が存在するとしたら、それはキャプテン・ビーフハートである。("If there has ever been such a thing as a genius in the history of pop music, it's Beefheart")」という言葉でキャプテン・ビーフハートことドン・ヴァン・ヴリートを評したのはBBCの伝説的DJ、ジョン・ピールである。そんな天才・キャプテン・ビーフハートの代表作が3作目の『Trout Mask Replica』であるというのはほぼ間違いないと思うが、2014年4月現在、この『Trout Mask Replica』の入手が難しくなっている。その原因はザッパファミリーによる『Trout Mask Replica』の権利取得にある。ザッパファミリーに本作品の権利が移行したことにより、安価かつ市場に多く流通していた旧盤が廃盤となった一方で、昨年5月にZappa Recordsから発売されたリイシュー盤は基本的にザッパ公式サイトからの直販という形を取っていることから、あまり市場には出回っていない上、日本だけでなく米英のAmazonで検索してみても、旧盤・リイシュー盤共に高値がついており、音楽ファンが『Trout Mask Replica』というポップ・ミュージックシーンにおける最重要作品に出会う機会が失われているという意味では、現在の状況は最悪とも言える。この状況を生み出したのは明らかにザッパファミリーによるリイシューなのだが、大変心苦しいことに、Bob Ludwigによるリマスタリングが施された2013年リイシュー『Trout Mask Replica』のCDの出来がとてつもなく素晴らしいのだ。旧盤を一切聴かなくなってしまった程私はこのリイシュー盤を愛聴している。リマスタリングという行為の存在価値を改めて実感させてくれるような、見事な音像に仕上がっているのだ。全体の音圧が向上し、全ての楽器の音が前方に引き出され、それぞれの楽器のフレーズがくっきりと浮かび上がってくる。このリマスター盤の素晴らしさは、"Moonlight on Vermont"を一聴すればすぐにお分かりいただけると思う。ともかく、Zappa Recordsによるリイシュー盤は、私が心の底から「買って良かった」と思える程の出来だったのだ。
 とは言え、ザッパ公式サイトで$34.70(送料込み)、日本国内であれば5000円近くするCDを気兼ねなく買う人というのはよっぽどのビーフハートファン、またはザッパ公式サイトでザッパ作品を買うついでにトラウト・マスク・レプリカのCDをカートに入れておいたザッパファン、もしくは小金持ちのレコード・コレクター以外ありえないのである。いかにリイシューCDの出来が良かろうとも、多くの音楽ファンの手に取ってもらおうという姿勢が一切感じられないザッパファミリーのニッチ的な販売方式にはかなり問題があるのではないだろうか(高い価格設定というのは中高年向けの典型的なリイシュー商法にも見受けられるが、今回の場合、市場にCD自体が出回っていないというのが一番の問題である)。次作の『Lick My Decals Off, Baby』のCDも長年に渡り廃盤の状態が続いており(私も再発のカラーヴァイナルしか保有していない)、ビーフハートの音楽キャリア史上、最も前衛的な方向を突き進んだ最高傑作とも言える2作品が手に入りにくいという現状をどうにか打破していただきたいと一ビーフハートファンとして思うばかりであります。


前置きは長くなったが、『Trout Mask Replica』という作品そのものについて語らせて頂きたい。先程は「天才・キャプテン・ビーフハートの代表作」と申し上げたが、この「代表作」という言葉にはある種の「悪名高さ」という意味合いも込められている。前衛音楽からブルース、フリー・ジャズ、スポークン・ワードに至る、多様な音楽が織り交ぜられた作風は混沌を極めており、多くの音楽ファンを悩ませてきた。かくいう私も、高校生時代に本作品を初めて聴いた時はわけが分からず、一度聴いただけでCDを数ヶ月放置した経験がある。「ポップ・ミュージックの歴史において、音楽以外の領域で活動する芸術家たちにも理解し得る、芸術作品として見なすことが出来る音楽作品が存在するとしたら、おそらく『トラウト・マスク・レプリカ』がそのような作品である」と絶賛したジョン・ピールでさえも初めて聴いた時は困惑したといい、ザッパフリークでお馴染みの『ザ・シンプソンズ』の作者、マット・グローニングも「初めて聴いた時、俺は十五歳だった。これほどひどい音楽があったのかと驚いたね。こいつら、不協和音をぶちまけているだけで、演奏する気なんかないんだと思ったよ。」と語っている。こうした『Trout Mask Replica』の作風に対する困惑は、ビーフハート・マジックに掛かるためのある種の通過儀礼なのではないだろうか。「そして、三回目くらいになってようやく気づいたのさ。かれらは、わざとこういう音を出しているんだって。六回目か七回目で、完全にはまった。こんなすごいアルバム、ほかにありっこないと思い始めていたよ。」グローニング氏も何度も聴いていく内にビーフハート・マジックに掛かっていったのである。「最初に聴いた時にあまりしっくり来なかった作品ほど、後に愛聴盤となっていく」という音楽ファンの主張をよく耳にするが、『Trout Mask Replica』はその典型だろう。
 本作で聴くことの出来る「音楽的混沌」は、厳密に言えば「秩序ある混沌」である。ビーフハートのピアノ(演奏経験なし)による作曲を発生源とする奇妙な音塊が、ドラマーのジョン・フレンチによる採譜と8ヶ月に及ぶリハーサルに励んだザ・マジック・バンドによる再構築を通じて、最終的に「秩序のある混沌」と呼べるような、メチャクチャにやっているように見えて実は緻密に計算されたサウンド、へと辿り着いた。この手法は次作の『Lick My Decals Off, Baby』でも活かされており、バンドとして『Trout Mask Replica』以上にまとまった感のある素晴らしい演奏を聴くことが出来る。『Trout Mask Replica』を制作する前に行われた『Mirror Man』セッションでは、ブルースバンドとして典型的なワンコード進行によるジャム演奏が聴けるが、このある種ダラダラとした60年代後半に多く見られた長時間演奏するクリーム、グレイトフル・デッド的アプローチに対し、予め決まったフレーズをリハーサルを重ねる中で習得し、短い楽曲(最大でも5分)として構築していく『Trout Mask Replica』におけるアプローチは正に『Mirror Man』のそれとは対極に位置しており、サウンドそのものだけでなく作品の構築過程においても『Trout Mask Replica』はオリジナリティに溢れている。その点やはり、ビーフハートによるピアノフレーズを次々に採譜し、アレンジャーとして、また、ドラマーとしてサウンドをまとめあげたジョン・フレンチの功績は大きい。左右で異なったフレーズをかき鳴らすビル・ハークルロードとジェフ・コットンのツインギター、マーク・ボストンによる不気味なベース、それぞれの楽器のリズムパターンに絡みつくように演奏されるフレンチのドラムが絶妙なアンサンブルを生み出している。演奏自体は複雑だが、ブルースを軸にしたバンド編成だけあって、どこかシンプルな魅力すら感じられるのだ。
 
 「音楽作品の背景を知る必要はなく、音だけを聴いて判断すべきだ」という意見はもっともだが、少なくとも私は『Trout Mask Replica』の制作過程を知ることで本作品のサウンドに対する理解が深まり、作品に対する見る目が大きく変わった。かつての私のように、このジャケットが特徴的なアルバムが理解出来ずに放置している方も改めてこの独創的なサウンドに身を委ねてみてはどうだろうか。

追伸:昨日、英語版ページとマイク・バーンズ氏の評伝を参考に、日本語版Wikipediaに『トラウト・マスク・レプリカ』の項目を追加したので、是非読んでみてください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AB