2014-04-29

Wall Of Voodoo - Back In Flesh

会社に行きたくない男の歌です



Someone smashed my alarm
誰かが俺の目覚まし時計をぶっ叩く
It's got me on the edge
それが俺を窮地に立たせるんだ
You know it's so sharp (Aaaaaaaa...)
あんたはそれが辛いことだって知ってるだろ(あああああ…)
And you know I won't go
>そんで、俺が出社しないってことあんたは分かってるんだろ
You know I won't go
出社しないって
I don't wanna go (He won't go)
俺は行かないぜ(彼は行かないよ)
The corporation's boiling over
会社は激怒し
Everybody's taking over
オレの仕事をみんなが引き継いでる

And I'm back in flesh

そして俺は肉体に戻るんだ
Back in flesh
肉体へ戻っていく
Back in flesh
肉体に回帰するんだ
Back in flesh
肉体へとな
Back in flesh
肉体に

You better sign your time card now

さっさとタイムカードに記名した方がいいぞ
They don't care about you anyhow
どうせ彼らは君のことなんて気にかけてないんだから
Sign in, your minimum cut
記名しろ、ちっぽけなマヌケ
You're late again, your salary's cut!
また遅刻したな、減給だ!

I won't go (He won't go.)

俺は行かないぜ(彼は行かないよ)
I don't wanna go (You must go!)
行きたくないんだ(君は出社しなければならない!)
Is it time to go? (The orders are in!)
もう行く時間かい?(命令が来てるぞ!)
Well, I'd rather go bowling! (The lanes are closed!)
ボーリングに行きたい!(ボーリング場は閉まってるぞ!)
Maybe a little tennis? (Your racket's got a hole.)
じゃあ軽くテニスは?(ラケットに穴が開いちゃってる)
How about some baseball? (Field's rained out.)
野球なんかはどう?(グラウンドは雨でビシャビシャ)
Maybe a little fishing? (The fish are on vacation.)
じゃ釣りに行く?(魚は休暇中だ)
Well, how about some golfing? (The greens are overgrown.)
ゴルフは?(グリーンが生い茂っちゃってる)
Well, what about some swimming? (I don't think so!)
では水泳は?(嫌だね!)
Well, what about thisand that (No, no, no, no, no!)
じゃあアレとコレは?(ダメダメダメダメダメ!)
Well, you can't tell me what to do!
じゃあどうすりゃいいんだよ
Well, you can't tell me what to do!
教えてくれよ!
(Hey, fuck you!)
(おい、お前なんかくたばっちまえ!)


ニューウェーブ系バンドの演奏を集めた映画"Urgh! A Music War"のDVDを観てから妙にハマってしまったWall Of Voodoo。普段あんまり曲の和訳とかはやらないんですが、歌詞が面白かったんでやってみました。といってもWall Of Voodooの和訳なんて誰が見るんだよ…という話ではありますが。今度"Urgh! A Music War"について書こうかなと思ってます。

※Sign in, your minimum cutのyour minimum cutがよく分からなかったのでマヌケ(=your cut)という訳で誤魔化しました。すみません。

野球シミュレーションゲーム Out Of The Park Baseball(OOTP15)

最近、OOTP15(Out Of The Park Baseball)という野球シミュレーションゲームにハマっている。無料版のOOTP8や有料版のOOTP13でその魅力に取り憑かれて以来、OOTPを毎年のようにプレイしているのだが、今回のOOTP15はNPBやKBO等の海外リーグが実名で収録されておりプレイの幅が今まで以上に広がった。今回から取り入れられている流行のフラットデザイン的なレイアウトもいかにも球団経営シミュレーションらしい趣がある。 日本語版や日本語パッチが無いため日本の野球ファンにはちょっと敷居が高いかもしれないが、「やきゅつく」や「ベスプレ」が好きな方には是非ともやっていただきたいゲームである。MLBの球団でプレイすれば、選手の知識はもちろん、40人ロースターやアクティブロースター、ルール5ドラフト、また選手をマイナー降格させる際の苦悩(主に契約関係)といったMLB独特のルールや仕組みが理解出来るようになるので、現実のMLB観戦がより一層楽しくなる。もちろんNPB球団のGMとしてプレイするのも面白いだろう。しかし、ドイツ製(アメリカじゃないというのが意外ですね)のゲームということもありNPB関係のデータのところどころに不備が見られるので、よりNPBのデータに現実味を持たせてちゃんと遊べるレベルに持っていくためには日本人ユーザーによる修正が求められる。

 より多くの野球シミュ好きの日本人にこのゲームを楽しんでもらいたい、という気持ちから私は昨年からOOTPの解説動画を作ってニコ動にアップしている。正直OOTP8の解説動画はかなり稚拙というか雑というか、非常に分かりにくいものだった思う。ああいう実況動画っぽい感じで説明するというのはダラダラ喋ってればいいので作る側としては楽だが、視聴者の立場からすると退屈なものだ。しかも40分という長時間の動画になってしまうとなかなかしっかりと観てもらえる可能性が低い。今回新たにOOTP15の解説動画を作るにあたって、自分の声で説明するのを辞めた。多少私のaviutlを使った動画編集技術が向上したということもあり、テロップで説明するスタンスを取ることにした。この手のゲームはそういうやり方のほうが分かりやすいし、理想的である。今後は選手ステータスの説明やロースターの入れ替えなどを解説する動画を作り(こんな記事書いてないでさっさと続きの動画を作れよ、という声が聞こえてきそうですが)、動画で説明が不足している部分はwikiやブログで補足していきたい。いずれは日本人同士でオンラインリーグなんかもやってみたいなあ。




ちょっとしたOOTP指南…

OOTPの新作が出る度にMLBのお荷物球団の呼び声高い弱小ヒューストン・アストロズをいかにして勝たせるかという苦行に取り組むのが私のルーティーンなのだが、そのアストロズでのプレイ風景を紹介したいと思う。

初期状態のアストロズは予算も選手総年俸も30球団中29位。最下位はどこ?

アストロズのような球団は主力選手が不足している上に、予算も少ない。そういった球団で大物FA選手を獲得して優勝争いする、高年俸の長期契約を結んで選手を囲む、というある種のゴリ押しプレイを行うのは到底不可能である。ではこのような状況においてどのような指針を元に球団経営を進めればいいのだろうか。私の経験を元に「弱小球団が強くなるための6か条」を考えてみた。

①優秀なスカウトを獲得する
②出来るだけ契約更改が始まる前の選手(MLB最低保証年俸)を起用する
③契約更改で年俸が跳ね上がり、その年俸に見合う活躍が見込めない選手は他球団の若手有望選手とトレードする
③FA選手獲得よりも選手育成にお金をかける
④例外として、中継ぎ投手は安くてコスパが良いのでFAで獲得すると良い
⑤ルール5ドラフトを活用する
⑥首脳陣は出来るだけ優秀な人を集める



優秀なスカウトを獲得する 

OOTPでは選手の能力がスカウトの査定を元に表示される。つまり、選手の能力値をそのまま表示する一般的な野球ゲームとは違い、選手本来の能力は基本的に分からないのだ(コミッショナーモードやスカウト査定の精度(Scouting Accuracy)を弄れば真の能力というのは分かるらしいのだが、それじゃ面白くない)。しかし、優秀なスカウトを雇うことで選手の能力表示の精度は向上する。選手の現在の能力(Overall Rating)と将来の選手像(Potential Rating)を出来るだけ正確に把握することで、誰をスタメンで起用し、または放出するべきか判断出来る。優秀なスカウトがチーム編成の基礎を創り上げるのである。しかしながら、期待していた能力値が高い選手の成績がシーズン通して低調だったり、逆に能力値が低いと考えられていた選手がレギュラーとして好成績をたたき出したり、ということもあったりする。そういうある種の不確実性やもどかしさがOOTPの醍醐味であり、やめられない理由だ。

アストロズスカウトによる査定。
非常に評価が高い。
このような、現在の能力はまだ低いが
Potential Raitingの高い選手がいわゆるプロスペクトと
呼ばれるタイプの選手だ。
OSA(スカウト協会)による査定。評価は低い。
ただし、球団スカウトよりOSAのスカウトによる
査定のほうが正しい場合もある。
両者の査定を見比べることが大事だ。


出来るだけ契約更改が始まる前の選手(MLB最低保証年俸)を起用する

契約更改で年俸が跳ね上がり、その年俸に見合う活躍が見込めない選手は他球団の若手有望選手とトレードする

俺アストロズのエース、ジャレット・コザート投手の調停結果。
チーム提示額の7億2000万円に対し、選手提示額の
9億3750万円が年俸として選択されたというメール内容。
MLB(メジャー)の選手はNPBのように入団1年目から年俸調停に臨めるわけではなくて、その資格を得るためにはMLBでの3年以上の経験、FA権の取得は6年以上の経験が必要となる。MLBでの最初の3年はメジャーが定める最低保証年俸(OOTPの場合は50万ドル≒5000万円)しか貰えない。つまり、最初の3年で選手がどれだけ素晴らしい成績を叩き出そうとも、球団は最低保証年俸を払うだけで済むのだ。現実のMLBで言えば、エンゼルスのマイク・トラウト選手が良い例だ。こうしたMLB歴の浅く有能な選手を重用することは、効率の良いコストマネジメントの手段となる。MLBの年俸調停における調停人は第三者が行い、球団の提示金額と選手の希望金額のどちらかが選ばれる。OOTPにおける年俸調停は、球団側の希望金額を提示すること自体は可能なのだが、経験上、選手の希望額(当然ながら球団のそれより高い)が選択されるケースが多い。そのため、最低保証年俸の時期に大活躍した選手の年俸が5000万円から一気に10億円に跳ね上がる、ということも多々ある。アストロズのような球団の場合、調停によって年俸が跳ね上がった選手を保有することで予算が圧迫され、球団運営が難しくなってくる。間違いなく活躍する選手であればFA権取得まで10億円以上払ってでも雇う価値はあると思うが、あまり年俸に見合った活躍が出来そうにない場合はその選手をトレードに出して10億円を浮かせ、別の経験の浅い若手選手や年俸の安い代替選手を起用したほうがコスト的には有利、ということも考えられる。

FA選手獲得よりも選手育成にお金をかける

例外として、中継ぎ投手は安くてコスパが良いのでFAで獲得すると良い

 高年俸のFA選手と複数年契約したものの怪我で長期離脱、スタメン復帰しても打てない。でも年俸は高いし能力が劣化してるから他球団もトレードに応じてくれない。こんなことになったらアストロズのような低予算チームが暗黒時代に突入してしまうのは火を見るより明らかである。30歳以上の実績のあるFA選手との契約よりも、チームに居るPotential Ratingの高い選手の育成にお金をかける、これこそ低予算チームが生き残る道である。しかし例外もあって、中継ぎ投手に関してはFAで獲得するべきである。何故なら、単年4億以下の年俸で契約してくれる優秀な中継ぎ投手がFA市場に溢れているからだ。万が一獲得した中継ぎ投手が活躍しなかったとしても低年俸で獲得した選手であればダメージは少ない。ちなみに1-20スケールの査定で言えば、コントロールの数値が10以下のノーコン中継ぎ投手の獲得はやめたほうがいいです。FA市場において相場が高騰しがちな先発投手は球団で育成し、コストの掛からない中継ぎはFAで補強、というのが理想的な投手編成であると思われる。

ルール5ドラフトを活用する

 ルール5ドラフトとは簡単にいえば「ある球団で40人ロースターに登録されずに干されてる有望な選手を他球団が救済する」というMLB特有の制度である。40人ロースターとはNPBで言う支配下登録選手枠のことであり、40人ロースターに登録されていない(マイナー契約)選手はアクティブロースターへの登録が出来ないので、MLBの試合に出場することが出来ない。ルール5ドラフトのリストに載る選手というのは、NPBで例えると、ずっと育成契約で一軍の試合に出させてもらえない選手、という感じだろうか。ルール5ドラフト自体の説明は他サイトのほうが詳しいと思うのでそちらにお任せしますが、ともかく他球団の干されてる若手選手を獲得出来るこのルール5ドラフトは赤貧球団にとって非常にありがたい制度である。ただし、ルール5ドラフトで獲得した選手は15日の故障者リスト入りさせる以外はシーズン通じてアクティブロースター(MLB)に登録しておかなくてはならないという制約もある。もしルール5ドラフトで獲得した選手が不調であっても、マイナーリーグに降格させることが出来ない。ルール5ドラフトではMLBの舞台での活躍が本当に見込める選手を見極めて獲得しないと後で痛い目にあう。

首脳陣は出来るだけ優秀な人を集める

 貧乏球団は基本的に育成重視になるので、やはり選手の上に立つ首脳陣は優秀でなくてはならない。コーチの能力は選手のパフォーマンスや成長に影響を及ぼすため、育成費用同様、ここをケチってしまうと若手有望選手の才能を無駄にしてしまう可能性がある。ちなみに、コーチの経験年数はコーチ自身の能力には影響を及ぼさない。経験年数が長いほど要求してくる給料の額が高くなるので、経験年数が少なくて能力の高い指導者を雇用することでコストカットに繋がる。

選手育成画面。全球団の平均は9億円だが、
出来るだけ多くの金額をここでは投資したい。
コーチのプロフィール画面。MLBだけでなくマイナー
下部組織のフロントの人事も管理しなきゃならないので結構面倒。
















ヒューストン・アストロズ育成日記

それではここまで4年間プレーした俺・ヒューストン・アストロズの軌跡を紹介します。

2014年 79勝83敗(.488) 3位      
2015年 83勝79敗(.512) 3位
      
2016年 67勝95敗(.414) 5位
      
2017年 97勝65敗(.599) 1位 PO敗退 

4年目の2017年は首位を独走するも
POで3タテを喰らいあっさり敗退。
初年度はカストロ捕手(.298 25 101 OPS.906)や、コザート投手(17勝9敗 3.06)などの活躍もあり意外にも借金4の3位でフィニッシュ。2年目は打線が低調ながらも
成長著しい切り込み隊長スプリンガー(.221 28 78 OPS.733)やシアトルから移籍したスモーク(.271 30 100 OPS.837)、投手陣ではFAで獲得したシールズ(12勝12敗 3.93)の活躍で貯金4の3位という来季に期待出来る成績。3年目は自分としては優勝を狙える戦力を整えたつもりだったが、まったく投打が噛み合わず67勝95敗(借金28)の最下位。しかしルール5ドラフトでカブスから移籍したボーゲルバッハ一塁手(Dan Vogelbach)は.300 29本 102打点 OPS.859の大活躍でスタメンの座を射止める。スプリンガーも.265 33本 82打点 OPS.839という成績を残し恐怖の1番打者として君臨。投手陣ではエースのコザート(12勝12敗 4.12)、初年度のドラフト1位投手でナックルボーラーのウォーターストン(8勝10敗 4.48)、FAで獲得したケネディ(12勝16敗 4.26)、シールズ(13勝16敗 4.67)がローテーションを守ったものの投手陣全体の防御率が軒並み高く勝率も良くなかった。
 4年目の2017年はアストロズが快進撃を見せたシーズンとなった。まずは2016年のシーズンオフ、チームの不甲斐なさにムカついた俺GMは監督のボー・ポーターを解雇。代わりに35歳のマイケル・ガードナー氏が監督に就任。また、アロンソ一塁手をトレードに出して中継ぎのバーンズ投手を獲得。またシールズやアルチューベなどの選手を放出して予算を確保。既存戦力に期待していたので大胆な戦力補強はしなかった。
シーズン開幕直後、守護神のストリートが怪我で今季絶望となるものの代わりにブロクストンが新守護神の座に収まり、4月中旬から5月にかけて10連勝するなどチームは序盤から絶好調。そのままペナントレースを突っ走り6地区中最速で優勝を決めた。投手陣ではエースのコザートの活躍(14勝5敗3.17)はもちろん、今季大きな飛躍を見せ最終的に19勝9敗3.80という成績でサイヤング賞を受賞したナックルボーラーのウォーターストン、中継ぎ投手としてトレード移籍したものの先発転向に成功し10勝9敗3.55という好成績を残したバーンズ、通年でローテションを守ったケネディ(14勝11敗3.85)の活躍が大きかった。野手陣ではセッチーニ(Cecchini)三塁手とボーゲルバッハ一塁手のルール5ドラフトコンビが大活躍。セッチーニはが2番打者として出塁率.397 OPS.867と素晴らしい結果を残し、ボーゲルバッハ一塁手は本塁打王と打点王を獲得した。シーズン終盤にエースのコザート、1番スプリンガーが残りシーズンはおろかプレーオフにも出られない怪我で離脱したのが響いて、プレーオフではなんと同地区のレンジャーズに3タテを喰らい敗退。貧乏球団らしいプレーオフでの敗退っぷりであった。


ピーター・“ナックジー”・ウォーターストン投手。
初年度ドラフトプールに居た謎の日本人ナックルボーラーを指名し勝手にアメリカ人っぽい名前と風貌に変更した選手。
能力値は弄ってません。ちなみに「ナックジー」はかの有名なナックルボーラー、フィル・ニークロのアダ名から頂戴しました。
球速の平均は80-83マイルという正に典型的なナックルボーラー。たまらん能力と成績。
スタミナも豊富でナックルボーラーらしくイニングを食いまくるのが素晴らしい。
生え抜きでチームの切り込み隊長スプリンガー。
終盤に怪我で離脱したものの、1番打者で32本塁打という恐ろしい成績。
カープの堂林はこんな感じの成績を目指して欲しい。
2年目のオフのルール5ドラフトで獲得した選手①。
弱冠24歳で本塁打王と打点王のタイトルを獲得。
優秀な選手だけに年俸調停の金額が怖いです。
2年目のオフのルール5ドラフトで獲得した選手②。
選球眼の能力値(Eye/Discipline)が高めの優秀な選手です。
出塁率が高く足も遅くはないので理想的な2番打者です。

低予算編成で地区優勝した結果、シーズンスコアが100点中129点を記録しました。
ってそれじゃ100点中じゃないでしょ(笑)

2014-04-19

Captain Beefheart - 『Trout Mask Replica』 1969

「ポップ・ミュージックの歴史に天才が存在するとしたら、それはキャプテン・ビーフハートである。("If there has ever been such a thing as a genius in the history of pop music, it's Beefheart")」という言葉でキャプテン・ビーフハートことドン・ヴァン・ヴリートを評したのはBBCの伝説的DJ、ジョン・ピールである。そんな天才・キャプテン・ビーフハートの代表作が3作目の『Trout Mask Replica』であるというのはほぼ間違いないと思うが、2014年4月現在、この『Trout Mask Replica』の入手が難しくなっている。その原因はザッパファミリーによる『Trout Mask Replica』の権利取得にある。ザッパファミリーに本作品の権利が移行したことにより、安価かつ市場に多く流通していた旧盤が廃盤となった一方で、昨年5月にZappa Recordsから発売されたリイシュー盤は基本的にザッパ公式サイトからの直販という形を取っていることから、あまり市場には出回っていない上、日本だけでなく米英のAmazonで検索してみても、旧盤・リイシュー盤共に高値がついており、音楽ファンが『Trout Mask Replica』というポップ・ミュージックシーンにおける最重要作品に出会う機会が失われているという意味では、現在の状況は最悪とも言える。この状況を生み出したのは明らかにザッパファミリーによるリイシューなのだが、大変心苦しいことに、Bob Ludwigによるリマスタリングが施された2013年リイシュー『Trout Mask Replica』のCDの出来がとてつもなく素晴らしいのだ。旧盤を一切聴かなくなってしまった程私はこのリイシュー盤を愛聴している。リマスタリングという行為の存在価値を改めて実感させてくれるような、見事な音像に仕上がっているのだ。全体の音圧が向上し、全ての楽器の音が前方に引き出され、それぞれの楽器のフレーズがくっきりと浮かび上がってくる。このリマスター盤の素晴らしさは、"Moonlight on Vermont"を一聴すればすぐにお分かりいただけると思う。ともかく、Zappa Recordsによるリイシュー盤は、私が心の底から「買って良かった」と思える程の出来だったのだ。
 とは言え、ザッパ公式サイトで$34.70(送料込み)、日本国内であれば5000円近くするCDを気兼ねなく買う人というのはよっぽどのビーフハートファン、またはザッパ公式サイトでザッパ作品を買うついでにトラウト・マスク・レプリカのCDをカートに入れておいたザッパファン、もしくは小金持ちのレコード・コレクター以外ありえないのである。いかにリイシューCDの出来が良かろうとも、多くの音楽ファンの手に取ってもらおうという姿勢が一切感じられないザッパファミリーのニッチ的な販売方式にはかなり問題があるのではないだろうか(高い価格設定というのは中高年向けの典型的なリイシュー商法にも見受けられるが、今回の場合、市場にCD自体が出回っていないというのが一番の問題である)。次作の『Lick My Decals Off, Baby』のCDも長年に渡り廃盤の状態が続いており(私も再発のカラーヴァイナルしか保有していない)、ビーフハートの音楽キャリア史上、最も前衛的な方向を突き進んだ最高傑作とも言える2作品が手に入りにくいという現状をどうにか打破していただきたいと一ビーフハートファンとして思うばかりであります。


前置きは長くなったが、『Trout Mask Replica』という作品そのものについて語らせて頂きたい。先程は「天才・キャプテン・ビーフハートの代表作」と申し上げたが、この「代表作」という言葉にはある種の「悪名高さ」という意味合いも込められている。前衛音楽からブルース、フリー・ジャズ、スポークン・ワードに至る、多様な音楽が織り交ぜられた作風は混沌を極めており、多くの音楽ファンを悩ませてきた。かくいう私も、高校生時代に本作品を初めて聴いた時はわけが分からず、一度聴いただけでCDを数ヶ月放置した経験がある。「ポップ・ミュージックの歴史において、音楽以外の領域で活動する芸術家たちにも理解し得る、芸術作品として見なすことが出来る音楽作品が存在するとしたら、おそらく『トラウト・マスク・レプリカ』がそのような作品である」と絶賛したジョン・ピールでさえも初めて聴いた時は困惑したといい、ザッパフリークでお馴染みの『ザ・シンプソンズ』の作者、マット・グローニングも「初めて聴いた時、俺は十五歳だった。これほどひどい音楽があったのかと驚いたね。こいつら、不協和音をぶちまけているだけで、演奏する気なんかないんだと思ったよ。」と語っている。こうした『Trout Mask Replica』の作風に対する困惑は、ビーフハート・マジックに掛かるためのある種の通過儀礼なのではないだろうか。「そして、三回目くらいになってようやく気づいたのさ。かれらは、わざとこういう音を出しているんだって。六回目か七回目で、完全にはまった。こんなすごいアルバム、ほかにありっこないと思い始めていたよ。」グローニング氏も何度も聴いていく内にビーフハート・マジックに掛かっていったのである。「最初に聴いた時にあまりしっくり来なかった作品ほど、後に愛聴盤となっていく」という音楽ファンの主張をよく耳にするが、『Trout Mask Replica』はその典型だろう。
 本作で聴くことの出来る「音楽的混沌」は、厳密に言えば「秩序ある混沌」である。ビーフハートのピアノ(演奏経験なし)による作曲を発生源とする奇妙な音塊が、ドラマーのジョン・フレンチによる採譜と8ヶ月に及ぶリハーサルに励んだザ・マジック・バンドによる再構築を通じて、最終的に「秩序のある混沌」と呼べるような、メチャクチャにやっているように見えて実は緻密に計算されたサウンド、へと辿り着いた。この手法は次作の『Lick My Decals Off, Baby』でも活かされており、バンドとして『Trout Mask Replica』以上にまとまった感のある素晴らしい演奏を聴くことが出来る。『Trout Mask Replica』を制作する前に行われた『Mirror Man』セッションでは、ブルースバンドとして典型的なワンコード進行によるジャム演奏が聴けるが、このある種ダラダラとした60年代後半に多く見られた長時間演奏するクリーム、グレイトフル・デッド的アプローチに対し、予め決まったフレーズをリハーサルを重ねる中で習得し、短い楽曲(最大でも5分)として構築していく『Trout Mask Replica』におけるアプローチは正に『Mirror Man』のそれとは対極に位置しており、サウンドそのものだけでなく作品の構築過程においても『Trout Mask Replica』はオリジナリティに溢れている。その点やはり、ビーフハートによるピアノフレーズを次々に採譜し、アレンジャーとして、また、ドラマーとしてサウンドをまとめあげたジョン・フレンチの功績は大きい。左右で異なったフレーズをかき鳴らすビル・ハークルロードとジェフ・コットンのツインギター、マーク・ボストンによる不気味なベース、それぞれの楽器のリズムパターンに絡みつくように演奏されるフレンチのドラムが絶妙なアンサンブルを生み出している。演奏自体は複雑だが、ブルースを軸にしたバンド編成だけあって、どこかシンプルな魅力すら感じられるのだ。
 
 「音楽作品の背景を知る必要はなく、音だけを聴いて判断すべきだ」という意見はもっともだが、少なくとも私は『Trout Mask Replica』の制作過程を知ることで本作品のサウンドに対する理解が深まり、作品に対する見る目が大きく変わった。かつての私のように、このジャケットが特徴的なアルバムが理解出来ずに放置している方も改めてこの独創的なサウンドに身を委ねてみてはどうだろうか。

追伸:昨日、英語版ページとマイク・バーンズ氏の評伝を参考に、日本語版Wikipediaに『トラウト・マスク・レプリカ』の項目を追加したので、是非読んでみてください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AB